Sonatine(ソナチネ)


監督・主演 北野武
1993年公開

通しできっちり鑑賞したのは初!です。
やっと観れた~、なんだろう機会がなかった。
北野監督の映画作品メイキング映像とかは今までさんざん観てきたのに。
(以下、敬称略)
この作品は例のバイク事故直前?に撮られた映画で、当人がかなりの鬱状態の中メガホンをとったんだとか。以前ご本人が語ってた。
それが武の演技をあんな神掛かったものにしたんだ……と納得。

映画そのものの出来としてはかなり稚拙な部分があり、荒削りもいいとこ。
それはおそらく計算ではなく、この時期の武が本能のままに描いた作品だからこそ…なのかなって。
今巨匠になった彼にこんな映画はもう作れないし…この演技も不可能だろうな…。
駆け出しの漫画家のような勢いと「こういうの撮りたいんだよ…」っていう剥き出しの欲望を感じる。

低予算映画にありがちな「拳銃の発砲音」のチャチさとか血の適当さとか、もういろんな安っぽさも逆に魅力になってる不思議な映画。
そして鬱病になったことがある人ならわかる主人公村川の精神状態、これは当時の武の素の姿としか思えない。

物語はヤクザの内部抗争というか、よくある「あいつは羽振りがいいし目の上のタンコブになってきたから潰しておくか」っていう裏切りの話なんだけど、沖縄の海がまた素晴らしく物悲しい。
広く寂しい海に放り出された東京のヤクザたちがいかに無力で、人間なんて、俺達なんて所詮何もできないちっぽけな存在なんだよ…っていうのを説明一切抜きに「画」だけでみせてくれる。
テーマは単純で救いようがなく、結末は「ある一つの決着」しか用意されていないことが冒頭からもうわかりきってるんだけど…さすがビートたけし!!!!
すごいんだよ、ロシアンルーレットであれだけの緊張感と同時にほんの少しの笑いを交えてくるってどういうこと???
すっげードキドキしながら気づいたらプって吹き出してた自分に驚いちまった。

それもね、寺島進と勝村正信の神演技、これなんですわ…これは武の指導でこういう演技になったのか?それともアドリブ的にここまでのキャラになり得たのか、すごく気になるw
自分がもしすっげー偉い立場で助演男優賞を決めるなら迷いなく勝村さん選びますwとことんまでリアルな沖縄ヤクザの若造…すごいわ役者さんって。

最近亡くなったという大杉漣、そして渡辺哲……とまあ味のある俳優さんばかりだけど全然負けていない映画の中身、これはいい、本当にいい映画。
そんでもってやっぱり久石譲ですよ……なんなんこの人の音楽…神様かよ!!!!!
久石譲ってダジャレめいた名前つけたきっかけが久石さん憧れのクイーシージョーンズってのは有名な話だけど、あたしゃクイーシーより久石さんの方が神って思います。

幸を演じる国舞亜矢、誰だか知らんけどすごくいい!!!!
武の好みドンぴしゃですねこれは。

「おじさんすごいね、簡単に人殺しちゃうんだ」っつって…「簡単におっぱい見せちゃうおねえちゃんの方がすごいよ」と優しく微笑む村川、ここの場面が……なんだよもう全部悲しいじゃねえかーーーー!!!!!!武の色気が画面からダダ漏れっすわ!!!!!
なんか今思うとこれは主人公村川の心だけを映し出した精神世界の具現化なだけ…そんな気もしてくる。
それならあの淡々とした撃ち合いも、クレーンで海に沈めて殺してる最中に何の感情もわかない不思議な情景も納得。
もしかしたら周りはもっとざわついててでも村川の心はもう灰になっちゃってるから彼の瞳というフィルター越しに見える世界っていうかもう何言ってるかわかんないけどすっげーよかった!!!!!

この映画撮ってた武は確かにもう心が停止してて、あのバイク事故によって生還した…としか思えない。
死にかけたときに初めて心臓が動き出した…きっとそうなんだろうな。自分の生をやっと実感したってことだろう…多分。

でね、映画にも出てくるんだけど「死ぬのが怖いと死にたくなっちゃう」って台詞。
もうめちゃくちゃわかる…わかるんだよこれ。
死ぬのが怖いと死にたくなるんだよ…それ以外説明のしようがない感情を武が代弁してくれてた。
多分多くの人が感じてることなんだ、それで実際に死ぬことで死の恐怖から免れる人、それすらできず生き地獄に苦しむ人、どこかで脱却できた人。
この感情がわかりすぎて…。

わかりすぎる人間にとって、この映画はとても心に安心感を与えてくれる。

最後に…この映画で最も素晴らしいと感じた演出、それは………

 

最後の最後まで村川がアロハに着替えず真っ新な白いシャツを着ていたということ!!!!!!!!

繊細な北野武ならではの神演出。