SF小説の名作2冊・読書感想

またもや映画と小説漬けの日々


果しなき流れの果に (1966年)
小松 左京 (著)

あらすじ
N大学理論物理研究所助手の野々村は、ある日、研究所の大泉教授とその友人・番匠谷教授から一つの砂時計を見せられる。それは永遠に砂の落ち続ける砂時計だった!白堊紀の地層から出土されたというその砂時計の謎を解明すべく発掘現場へと向かう一行だったが、彼らは知る由もなかった―その背後で十億年もの時空を超えた壮大な戦いが展開されていようとは。「宇宙」とは、「時の流れ」とは何かを問うSFの傑作。

日本SF小説界の巨匠と言われる小松左京氏の名作と言われる一冊。

非情に文学的です。情景描写が繊細すぎてなかなか読み進めるのが辛かった。
本題よりもそういう心理・情景描写が冗長!!!!

しかししょっぱなから恐竜が火山噴火から逃げ惑う迫力描写に、なにやらグロい殺人事件ものを読んでいるような気持ちに…。
恐竜目線で描く文章って初めて読んだかもしれない、娘に聞かれ説明すると「ママが恐竜のお話読むのは珍しいね」と。
いや…恐竜の話読みたいわけじゃないんだがw

恐竜・火山噴火・謎の戦車?・レトロなダイヤル式電話機

この組み合わせの異様さにゾクゾク…。

まず、冒頭一行目から出る「蘇鉄」が私にはわからなかった。
読み進める前に息子の本棚から植物図鑑やら恐竜図鑑やら引っ張り出し調べる……。

なるほど…これらしい。同様に、「末期剣竜類」を調べる。ついでに息子にその説明も求めるw
デカくなった息子も久々に恐竜図鑑を開いたようでその説明中微妙に照れくさそうだ。

よし、これで物語に入り込めるぞ!!!

と思ったのも束の間、なかなかどうして、本題に入るまでがかなり長い。
そして、話がとにかく難解!!!!

大学教授たちの会話がマニアックで、いざタイムスリップ的な事件に遭遇してからも精神論がすさまじいわ、宇宙理論が専門的だわ、「時間」の概念からまず勉強しなきゃいかんな…と恥ずかしくなった。

これぞSF!!!という宇宙ステーション的な数々の建造物なんかはあらゆる映画小説でもある「丸型ポット」的なものなので割とイメージしやすい。
だけど登場人物が多く、さらには魂単位の時空移動、この時代にぶっとんだこと書く人だな…と驚きの連続。
今読んでも古臭さはない。レトロ感はあるがそれは決して古臭さと同義ではない。

最後はホロっとさせてくれるが、そこにいきつくまでが難解すぎて、もうこれ一度では理解不可能!!!!
この作品は映画化・アニメ化・漫画化も難しいと思う。だからこそ名作小説なんだろうけど、息切れしながら読了した今、また折を見て再挑戦したいと思う。

 



虐殺器官 (2007)
伊藤計劃 (著)

あらすじ
9・11以降の“テロとの戦い"は転機を迎えていた。
先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、 後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
米軍大尉クラヴィス・シェパードは、 その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、 ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…… 彼の目的とはいったいなにか?
大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは? 現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション

アニメ化もされたという(相当グロいだろうな)SF名作小説。

著者の伊藤計劃(いとうけいそく)氏のデビュー作で、2年後には他界されたそうな…。
なんというか、そういった事実と共にこのお話を読んで著者が表現したかったことを感じ取った時、まさに現代版『罪と罰』なのかもなあ…と思わされる。

近未来SF小説でありながら哲学・宗教的な面がかなり強い。
SFといえばかなりメカニックな世界観が描かれがちだが実際は皆が夢見るような技術はあと数百年は得られないと思うのでこの作品はリアルとアニメの世界の境界線といったところか。
稚拙と感じるか奥深いと感じるかは受け取り側の感性次第。どちらが正解、不正解というわけではないが、少なくとも一部読者から言われるような「大人向けではない」とまでは思わなかったなあ。
確かに、「人口筋肉」やら「言葉の裏に隠れたメッセージによる扇動」なんかはアニメっぽさがあるが、現実社会でも「サブリミナル効果」というものが存在するわけで、
我々の日常生活どこにそういった悪意に満ちたメッセージが送られているかわかったものじゃない。

しかも、主人公の悩みは人として至極当然で、軍人であるから人の死に迷いがないなんてことは決してなく、物語の舞台が特殊ではあるがメッセージは普遍的なものだと思う。

そして、心理学や脳に関する研究を記した書籍等読んでみるとこの小説のように、人間の「脳」だけは永遠に謎が解けない迷路、神秘の領域という結論に辿り着くのは必然なのかも、と思う。

ちなみに…私は最初未来の話とはわからずに、登場する武器やメカニックを全て実在するものだと思って読んでいたw途中で「あ…これ未来の話か…」と。

ちゃんとSFだと理解した上で読んでいたにも関わらず…。あまりにもなんとなくありそうな道具だったりするので騙されたのか、はたまた私の想像力が貧困すぎたのか冒頭の死体描写がまさにリアルタイムの中東といった感じで未来感を薄めていたのかな…。どんなに科学が発展しても人の死に様に変わりはない…と胸が痛んだ。

数々の未来設定の中で、私が「これはアニメ化も納得」と思ったのは度々登場する「人口筋肉」という部品?動物の筋肉を使っているんだけどまあその説明もグロくてリアル。なさそでありそでなさそうであるだろ??っていう絶妙なラインを突いてくる著者。すげー!この発想すげーーー!!!!

彼に画力があれば漫画家になっていただきたかった。諌山先生に並ぶ大物漫画家になっていたんじゃないかなあ…。まあ脚本でもきっと素晴らしいかっただろうな。

小説全般、かなり回りくどい文体が目立つが人類が今一度、世界とは何か、自分とは、命とはなんなのかを見つめ直す機会をくれる素晴らしいSF小説じゃないだろうか。SF好きなら絶対読んで損はなし!

 

本の感想