ドラマと映画と読書感想

今観てるドラマ、ちょー面白い!!9/9から配信スタートした話題のドラマ。
『ナルコの神』予告編 – Netflix

これ観たさに解約してたNetflix再加入してもうたw

ドラマ感想

ハッシュ~沈黙注意報~

原題: 허쉬(ハッシュ)
全16回 2020-2021

あらすじ
ペンよりビリヤードのキューを握る日の方が多い“怠け者”記者と、ご飯はペンより強いという“生存型”インターン記者の生存記とサラリーマン記者たちのどうにか暮らしを立てていく様子を描いたドラマ。 小説「沈黙注意報」が原作。

ファン・ジョンミン目当てで観始めたらまぁ面白くて、6回目くらいまでほぼ泣きながら観ちゃったwファン・ジョンミンの演技が良すぎるんだよな…ほんと。
ただ、このドラマ台詞が哲学的?屁理屈めいてる…?っていうのかな、かなりクドいので、その点で好き嫌いかなり分かれる作品だとは思う。
私はとりあえず出てくる登場人物の個性が序盤から気に入ったのでラストまで楽しく観れた。一気観!

インターン使い捨て、不正採用、権力者により事件のもみ消し、賄賂、裏取引…等々、社会問題に真っ向から立ち向かう、
考えさせれれるドラマだった。色恋沙汰は一切出てこないところもすごい。

私のお気に入りはオム部長で、この俳優さん観たことなかったから「イビョンホンからセクシーとかっこよさを削り落としたみたいなこのおっさんは誰や…」と思ってたら……すっげえイイキャラしててwwwオム部長が登場するたびに声に出して笑うくらい好きになってしまった、おもしろすぎるw

そしてチョン・セジュン役にキム・ウォネ、彼も初見、いい味出してるベテラン役者って感じでいい演技だったな…もう顔が演技派そのもの。

ヒロイン的存在のイ・ジスを演じたユナってのがアイドルグループ少女時代の人らしく、それも知らなかった。ちょっと役柄的に3回目くらいまではとにかくイラつく女なのでそこが我慢できず脱落する人もいたと思う。顔も態度もずーっと喧嘩売ってる感じなので、あまり気持ちよくはない。

ただ、それもハン・ジョンヒョク(ファン・ジョンミン)と和解してからは一転する。

なんか、多分ドラマの設定上2人の年齢差は25歳以上なんだろうけど、(実際は20歳差くらい?ユナが若く見える)「もうこれ好きになってまうやろ…」ってくらいファン・ジョンミンがかっこいい。
第10回あたりからジョンヒョクの服装や髪形がガラっと変わるんだけど、黒いタートルネック黒いパンツ、黒い革手袋に黒いロングコートのファン・ジョンミンに釘付けだったよ…。
演じた役もまぁイイ男で…。
しかし、そんな色恋なんて欠片も見せないストーリー展開がなおこのドラマを良いものにしてるんだな…と。

ナ編集局長を演じたソン・ビョンホ、この人も知らなかったんだけど凄みのある演技だった。実社会でもこういう男が上に登りつめるんだろうな…と思わずにはいられない怖さ、狡猾さ。9話の終わりにジョンヒョクとウナギを食べるシーンがあるんだけど互いに名演技で手に汗握ったな…。ノワール映画でお馴染み、ファン・ジョンミンの狂気がチラ見えする名場面だったと思う。

現代社会に渦巻く汚い陰謀にどう立ち向かうか、このテーマからブレることなく綺麗にまとまったドラマだと思う。
終わるのが寂しかったな…。

美しき日々

原題: 아름다운 날들
全24回 2001年

あらすじや人物相関図

独身時代、母と一緒にNHK深夜放送で観た懐かしドラマ。
一気にイ・ビョンホンのファンになったんだよねw
今みると髪型とか演出がすっごく古いんだけど、昔観た時より泣けて、ずーーーっと泣きながら観てしまったw
「好きすぎて好きすぎて辛い」っていう、人生でそうそう味わうことが出来ない感覚を思い出すドラマだなぁ…と。
この歳になって恋愛ドラマでこれだけ泣くなんて自分でもびっくり。
女が好きなベタが詰まった見事な名作だと思う。

施設育ちの純粋で心が綺麗なヒロイン、ヨンスは家庭の不和で人を愛せないイケメン御曹司ミンチョルと弟のソンジェに愛されてしまう。
のがつながらない妹セナとのヨンスのイザコザ。過去の殺人と会社の不祥事、ミンチョルの転落とヨンスの病気。
あれこれ詰まってて全24回全てが面白い。
笑っちまうくらいキザなミンチョルのふるまいは女子のハートを確実に掴む!ベタこそ正儀!

映画感想

戦場のピアニスト

原題 THE PIANIST
監督 ロマン・ポランスキー
製作国 フランス/ドイツ/ポーランド/イギリス
2015年公開

あらすじ
1940年、ドイツ占領下のポーランド。ユダヤ系ピアニスト、シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)は家族と共にゲットーへ移住。やがてユダヤ人の収容所移送が始まり、家族の中で彼だけが収容所行きを免れた。食うや食わずの潜伏生活を送るある日、遂に1人のドイツ兵に見つかる。
解説:
ナチスのホロコーストを生き抜いた実在のユダヤ系ピアニストの半生を描く、2002年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。『チャイナタウン』『テス』などで名高い巨匠ロマン・ポランスキー監督が、ポーランドの国民的ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの回想録を映画化。幼少時をゲットーで過ごし、母を収容所で亡くした経験を持つ監督自身の原体験に回帰した渾身の一作。主演のエイドリアン・ブロディが、代役なしで臨んだピアノ演奏シーンは圧巻。

名作として有名な映画、やっとこさ鑑賞。
思っていたよりアッサリしてたな…。

ポランスキー監督の経験とかなり近い映画で、wikipediaを読むと胸が痛んだ。
その割に、とても冷静に作られた映画だな…と。
淡々とした映画で、感情的な部分が見えない、だからこそものすごくリアルで悲しいのかもしれない。
舞台はポーランドの首都ワルシャワ。
この映画、ワルシャワ以外出てこない。
シュピルマンと家族は、ナチス・ドイツから占領されユダヤ人がゲットーに集めら過酷な生活を送る。
そして、強制収容所に送られる間際、シュピルマンだけが脱出に成功し、友人などの助けによってワルシャワ市内の隠れ家を転々とする。
終戦を迎えるまで息をひそめて「ただ生きながらえている」だけの生活を送る淡々とした描写はなんとも言えない。

そしてついに隠れ家までもが爆撃を受け、命からがら脱出し、空き家を転々としながらなんとか探し出したわずかな食糧で食い繋いでいく。
で、あの舞場面につながっていくわけだ…。
ドイツ将校に見つかってしまったシュピルマン、絶体絶命かと思いきやこの将校はシュピルマンの隠れ家にたまに食糧を差し入れするようになる。
感動的なんだけど感動していいのか悪いのか、なんか善悪がよくわからなくなるんだよね、この映画観てると。
このドイツ将校は、シュピルマンのピアノ演奏を聴かなかったらどうしてたんだろう…。
あの荘厳で悲しい演奏を聴いたことで、この戦争と、人の命と、今自分が置かれてる状況と…そして目の前で素晴らしい演奏を奏でる「ボロきれ同然の男」の姿と……、
様々な想いが重なりシュピルマンを助けたんだよね。

あの時代、あの場所で、ユダヤ人を人間として見ることができた、それだけでもすごいことなのかもしれない。
同じユダヤ人が自分の命と地位を守るため、同胞を殺していく、そんな世界観にもし自分が存在していたらどうなのか、そんなこと容易には想像できないな。

やがて終戦近くなり、ロシアがポーランドに侵攻してドイツ軍は撤退、シュピルマン達ポーランド人は開放されたが、彼を助けたドイツ将校は捕虜となる。
通りがかりのポーランド人に「自分はシュピルマンに助けたことがある、どうか彼に伝えてくれ」とSOSを出し、その伝言はシュピルマンの元に届くも、
ドイツ将校の名前もわからずじまいで、シュピルマンになすすべはなかった。

とても良い映画だとは思うんだけど、シュピルマンという人間を好きになれないのがなんとも残念だったな…。
まぁでも別にこの映画はナチスの残虐非道さや戦争の理不尽さ、そしてピアノ演奏に心打たれるあの名場面を味わえばそれでよし、なので誰かを好きになる必要はまったくないんだけどね…。
それでもシュピルマンを助けたことでピンチに陥った知人や命を失った友人、逃げ出さず戦って命を散らしたポーランド人のことを思うと、どうしてもシュピルマンみ魅力を感じられない。

フリーランサー NY捜査線 R15⁺


原題 FREELANCERS
監督 ジェシー・テレロ
2013年公開

あらすじ
ニューヨーク市警(NYPD)に配属されたジョナス(カーティス・“50Cent”・ジャクソン)は、かつては札付きのワルだったが、殺された父親の跡を継ぐように警官になった。新人のジョナスは、父親の元相棒サルコーネ警部(ロバート・デ・ニーロ)に闇仕事を命じられ、信頼を勝ち取っていく。しかし、父親の死の真実を知ったジョナスはサルコーネとその仲間たちへのリベンジを誓う。

なんかちょっと前にこれとかなり似た映画を観た気がする…タイトル思い出せないけど。
それはまぁいいとして、主人公ジョナス(マロ)役のカーティス・“50 Cent”・ジャクソン、
好きになれないなぁ…。
まず、近年のハリウッド映画やドラマにありがちの「全然かっこよくない黒人がイケメン扱いされて白人美女をあっという間におとす」
みたいなポリコレ?表現が好きじゃない。
差別だなんだと言われても、納得できないんだからしょーがないw
たとえば映画バッド・ボーイズでマイク役のウィル・スミスと、マーカス役のマーティン・ローレンスと役を交代したら絶対変だろ、って話ですわ。
「かっこいい、モテる」という設定がないならまだしも、それがあるのならカッコイイ人に演じさせろと。
くだらん理由かもしれないけど、もうそれがイライラしてこの映画嫌いだわ。
あと、フォレスト・ウィテカーの無駄遣い。
そしてデニーロの良さも出てない。
なんでもかんでもデニーロならいいだろって思ってるなら反省してほしい。

グランド・ジョー R15⁺

原題 JOE
監督 デヴィッド・ゴードン・グリーン
2016年公開
製作国 アメリカ

あらすじ
アメリカ南部の田舎町で暮らす男ジョーには複数の前科があったが、現在は森林伐採業者として真面目に働き、周囲の人々からも慕われていた。ある日彼は、仕事が欲しいという15歳の少年ゲイリーを雇うことに。ゲイリーは酒に溺れて働こうとしない父親の暴力に耐えながら、母や妹を養っていた。一緒に働くうちに親子のような関係を築いていくジョーとゲイリーだったが、そんな2人に過酷な運命が待ち受けていた。

映画を観る限り、原作小説(ラリー・ブラウン著)の方が良いんじゃないか?と…。
読んだことも無いのにこんなこと言うのも変だけどw
脚本を手掛けたゲイリー・ホーキンズが悪いのか?
この脚本家、この一作品しか脚本書いてないみたいだし……うーん。

ニコラスはいいんだよ、とてもいい。
悲しげで憂いある彼の持ち味が生きてた。
そしてヴェネチア国際映画祭第70回マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)したタイ・シェリダンの演技がとても素晴らしい。
そりゃ受賞するわな…っていう深みのある演技。

ただ、ジョーってなんであんなに訳アリみたいな雰囲気なんだ??
一体過去に何があった??
前科の件は途中で事情が明らかになるんだけど、もっと根の深い問題抱えてるよね?自分も育った家庭環境が酷くてゲイリーに親近感覚えてるって解釈でいいのか?
説明が多い映画は嫌いだけど、この映画細かい部分がよくわからんまま終わるからモヤるわw
ジョーに絡んでる地元のバカ、何かとんでもないこと企んでそうで実は本当に馬鹿で、全く後先考えてない行動ばかりなのは、まぁド田舎の糞不良の小ささという点ではリアルだけど、
なんかすごく「小さいことで大騒ぎしてるばかたち」ってのが前面に出すぎててダサいんだよね…。
ジェイソン・ステイサム主演の『バトルフロント』も、チンケなきっかけでチンケなチンピラに狙われててこいつらダセーな、と思ったけど、あれは一応麻薬売買とかしてるそれなりのワルで、
チンケなりに面白い映画になってたけど…。
まぁグランド・ジョーはメインがバトルではなくて友情とか愛情とか父性とかそんなのがテーマだからいいんだけどね…。
しかしゲイリーの親父は稀に見るクズオブクズで凄いなほんと…。
すごく面白い!っていう映画ではないんだけど、この静かな雰囲気と、ニコラスとタイの演技、やりとりがとても良い映画なので観ても損はなし、かな。

エクストリーム・ジョブ

原題 EXTREME JOB
監督 イ・ビョンホン
2020年公開
製作国 韓国

あらすじ
コが班長を務める麻薬捜査チームは、休みなく奔走しているのに実績を全く残せず、解散の危機にひんしていた。彼らは国際犯罪組織による国内麻薬密搬入の情報を入手し、起死回生を狙った潜伏捜査に打って出ることにする。コ班長とメンバーのチャン刑事、マ刑事、ヨンホ、ジェフンは、組織のアジト前にあるフライドチキン店を買い取って実際に営業しながら24時間体制で監視を行うが、フライドチキンがおいしいと評判になって客が殺到し、捜査する時間がなくなってしまう。

コ班長役のリュ・スンリョンが安倍元総理みたいなアライグマ?顔で和むw
韓国の刑事もので良いところは日本みたいに女がお飾りじゃないところだな~といつも思う。
美形でもブスでも堂々と胸張っていい女ぶってる、そこがカッコイイ。
欧米もそうだよね。日本くらいじゃないか?毎度毎度ブスはブスの役与えられてギャグ要因になり卑屈なキャラやらされてりしてるの。
欧米の刑事ドラマなんかも、顔がまずくてもなんか皆堂々としてる(本来それが人として当たり前の姿なんだけどね)
日本のルッキズムは悪化してるなぁ。
それはさておき、この映画ずっとふざけてるw
まぁちょっとギャグがクドイかもしれないけど刑事達が皆愛嬌あっていいキャラしてるし、バイオレンスもなくまさにファミリー映画って感じかな。
張り込みに浸かっていたフライドチキン店経営し出して儲かって、という流れ、テンポよくサクサク進んでいく。
ただ、あらすじを読んだ時点では、このチキン関連にもっと力を入れたストーリーだと思ったので、あっと言う間の繁盛でちょっと拍子抜け。
少しダレる部分もありつつ、ラストで豪快なドタバタバトルが起きるのは韓国映画のおきまりって感じでまぁ嫌いじゃないw

こんなコメディ映画でもバトルシーンがちゃんとしてるんだよね、韓国って。
どんだけ殴り合い蹴り合いが好きなんだよwwwって思うけどそこは私にとっては嬉しい演出だ。

とある一組のカップルの話が最高にウケるw
肩の力を抜いて観れる映画でした。

ちなみに監督のイ・ビョンホンは俳優のイ・ビョンホンとは別人。

王になった男

原題 MASQUERADE
監督 チュ・チャンミン
2013年公開
製作国 韓国

あらすじ
1616年、暴君の悪名高き朝鮮第15代王の光海君(イ・ビョンホン)は権力争いの渦中にあり、常に暗殺の危機にさらされていた。そんな折、彼とそっくりの容姿を持つ道化師ハソン(イ・ビョンホン)が王の影武者として宮中に上がることになる。重臣たちは、何とかして身分の低い平民であるハソンを王に仕立て上げようと画策するが……。

エロ?道化師なんかやってた平民の男が、難しい文字や文章をそうそう簡単に読みこなせるのか……?という疑問はさておき、書物を読み、政治についてどんどん学んでいくハソンがいじらしい。
もともとイイ奴なんだよね、純粋で。
そんな平民ハソンと冷徹な王、一人二役を過剰演技になりすぎず、見事に演じてるイ・ビョンホンさすが!

そしてハソンをこの世界にひきずりこんだ、王の側近を演じてるのは上で紹介した映画『エクストリーム・ジョブ』のアライグマ系フェイス、リュ・スンリョン。
こういう役もハマってるな~。
もっと緊迫感のある話だと思ってたから、案外優しくてコミカルなストーリーで安心した。
ノワール好きの自分としては刺激という意味では物足りないといえばそうなんだけど、これはこれですごく良かったな。
護衛隊長とハソンの関係は最後泣けるし、お世話係のお爺ちゃんもめっちゃ優しくてハソンとのやりとりに癒されるし…。
でもこのお爺ちゃん、他の映画ですっげー悪役やってるらしくてそっち観るの怖いなw
そして、美しい王妃に恋してしまうハソンと王妃のやりとりに胸がキュンとなって、そこらへんの恋愛描写はほんの少しなんだけど、
そこもまたあっさりしててよかった。
史実の中に見事にノンフィクションを織り込んだうまい脚本だった。
エンディングは二通りあったらしいけど、こっちで良かったと思う。
エンドロールで光海君と側近が実際どういう末路を辿ったか記されてるんだけど、結構悲しいな…。
しかし、この映画210分?とかあるんだけど全然長く感じなかったんだよね。
刺激が合ったりスリリングってわけでもないのに、ずっと見入ってしまう映画って、言葉で説明できないんだけど相当映画作りの技巧が長けてるってことなんだろうな。
暴君と呼ばれた悪名高き光海君という王について調べたくなる映画だった。

悪魔を見た R18⁺

原題 I SAW THE DEVIL
監督 キム・ジウン
2011年公開
製作国 韓国

あらすじ
国家情報院捜査官スヒョン(イ・ビョンホン)の婚約者の死体の一部が発見される事件が発生。極秘で捜査に乗り出したスヒョンは、真犯人の連続殺人鬼ギョンチョル(チェ・ミンシク)を捕まえ、体の中にマイク付きのGPSチップの入ったカプセルを飲ませ解放する。そしてギョンチョルが犯行に及ぼうとするたびに現れ、アキレス腱(けん)を切るなどの残虐な制裁を加えていき……。

殺人鬼役が三又又三に似てるな~、とか思ってたらこれ『オールドボーイ』のチェ・ミンシクだった…。
太って歳とってたから気づかなかったのか、殺人鬼の雰囲気出してたから気づけなかったのか…。
どのみちこんな、一見クマさんみたいな風貌でこの猟奇的犯行、エグすぎる。
18禁なので本当にグロイ、でもすっげー面白かった。
これはジャンル的にはクライムサスペンス?ホラー?スプラッターではないよな…そこまでグチャグチャしてないし。
とにかくイ・ビョンホンが凄い。台詞なんてほとんどない。
ただただ復讐のためだけに殺人鬼ギョンチョルを痛めつける、すさまじい執念。
でもそのせいで犠牲にならなくていい人間が犠牲になってるので全然正義ではない、もはや正気ではない。
悲しき狂気、ってものを見事に表現してる。
そして、予想外だったのはギョンチョルがベジータ並みにタフなこと。
ここまでくると天晴だわw

刑事なのに単独行動で好き放題のスヒョン、いつまでも逃げおおせるギョンチョル、これに関してはそんなアホな、と思うけど、
韓国のクライムサスペンスにおいて警察はとにかく「いないも同然」なので全く役には立たないのは当たり前で、そこは決してつっこんではいけないw

復讐の空しさっていうのは永遠のテーマで、「大切なものを奪われた人は決して救われない」のはわかりつつも、ここまで徹底した復讐劇を見せてくれた監督凄いし、
ちゃんとエンタメ映画として面白いし、これを公開できる韓国の映画文化も素晴らしい。

あまりレビュー評価の良い映画ではないんだけど私はこの映画のイ・ビョンホンが観れて嬉しい。
最後の最後までとことんエグいのを貫いた脚本と、ラストの涙が凄くいい。
絶対人におすすめできないけど、私の中で好きな映画リストに仲間入り。

夏物語

原題 ONCE IN A SUMMER
監督 チョ・グンシク
2007年公開
製作国 韓国

あらすじ
60歳を超えた現在でも独身を貫き通す大学教授のユン・ソギョン(イ・ビョンホン)は、ある日、教え子で放送作家であるスジンから“初恋の人を探すテレビ番組”のエピソードとして「先生の初恋の人を番組で探したい」と頼まれる。困惑を隠せなかったソギョンだが、頼み込むスジンに負け古びた一冊の本を差し出すのだった。

とてもいい映画だった。

女性放送作家のスジンが「初恋の相手との再会を手助けすると番組」の企画の為に元大学教授のソギョンを訪ねる。
60過ぎてもハンサムで女性から人気があるソギョンを演じる老けメイクのイビョンホンもまたいいな~、とニヤニヤしながら観てしまったw
学生時代の農村ボランティアで出会ったジョンインという女性に会いたいと言うソギョン。
スジンとプロヂューサーは実際その村で取材をすると「かつてソギョンとジョンインは駆け落ちしてソウルへ行った」という事実を知る。

そして2人の出会いと別れの回想シーンが本編となり、ラストでジョンインの居場所に辿り着き二人は再会…という流れ。

農村の風景、ちょっと無理がある大学生役のイビョンホンが演じるソギョン、素朴で可憐な少女ジョンイン。

本当に純粋な恋の物語なんだけど、政治思想も絡む。
ジョンインは父親がアカだったということで少し差別を受けてる。
でもまぁそこまで酷くはない。
ここのらへんは、駆け落ちするまでの2人の恋模様が本当に素敵でキラキラしてたな…ずっと観ていたくなる。

互いに相手を愛していると自覚し2人はソウルに旅立つ。
が、そこから一転、すごい展開になる。
まさか、こんな重いストーリーだったとは…。

二人がソギョンの大学に立ち寄ったとき、ちょうど学生たちと鎮圧部隊の衝突が起き、その混乱で二人は離れ離れになってしまう。
二人は他の学生たちとともに連行され、それぞれ取り調べを受けることに。
その中で、ジョンインが北朝鮮に逃げた共産主義者の娘であることが発覚し、ジョンインとソギョンにスパイ罪の容疑がかけられる。
政権とコネクションのある父親にジョンインとは無関係と証言するよう指示されたソギョンは、取調官にソギョンの前に連れていかれ、
彼女の目の前で彼女を裏切ることになるのだが……そこがすごい。
取調官の暴力がすさまじく、若い学生があれをやられたらもうどんな信念も折れるんじゃないだろうか…。
拷問とかそういうんじゃなく、ビンタとか頭を叩くとか、なんだけどすっげー自尊心ボロボロになるような暴力なんだよね。
ああやって自白強要されて罪なき人が罪を自白するっていう事がどれだけあったことだろう、それは韓国だけじゃなく世界共通だよね…。

この映画は、とにかく取り調べシーンがすごい。
彼女を裏切ったソギョン、ソギョンを守ろうと話を合わせたジョンイン、
そんな彼女の愛に自分を恥じて、愛の深さを再確認し彼女にすがりつき、取調官に乱暴されながらイヤだイヤだ離れたくないと「僕が一生そばにいるよ」と号泣するソギョンは涙なしには見られなかった。
ここの演技はスエもイビョンホンも見事すぎて、思い出しても涙が出てくる。

やがてジョンインは釈放されるのだが、これ、どのくらい拘置されてたんだろう?
そこが全く描かれてないんだけど、夏に出会い夏の終わりに駆け落ちし、ソギョンが彼女を刑務所に迎えに行った時冬の装いだったから数か月?
2人は再会し、これからはずっと一緒だねと歩き出すが、そのあとすぐに駅の構内でソギョンは忽然と姿を消してしまう。

何故彼女は離れてしまったんだろう。
そこが全く説明されておらず、私の中では謎のままだ…。
やはり一度裏切った彼を信じられなかったのか、信じられるけど苦しかったのか、彼を苦しめたくないから離れたのか、わからない。
とにかく悲しすぎる物語だった。

最後のネタバレは控えるので、切ないラブストーリーが好きな方はぜひ。

チェイサー R15⁺

原題 THE CHASER
監督 ナ・ホンジン
2009年公開
製作国 韓国

あらすじ
デリヘルを経営する元刑事ジュンホ(キム・ユンソク)のところから女たちが相次いで失踪して、ときを同じくして街では連続猟奇殺人事件が発生する。ジュンホは女たちが残した携帯電話の番号から客の一人ヨンミン(ハ・ジョンウ)にたどり着く。ヨンミンはあっけなく逮捕されて自供するが、証拠不十分で再び街に放たれてしまい……。

これまたエグかったなぁ…。
解説に、「10か月に21人を殺害した疑いで逮捕された、韓国で“殺人機械”と言われた連続殺人鬼ユ・ヨンチョルの事件をベースにした衝撃のクライム・サスペンス」
と書かれていて、欧米並みの凶悪さだな…と。
この映画は『殺人の追憶』と同じくらい、必ずと言っていいほど名作韓国映画を語る上でタイトルが挙がるんだよね、だからずっと観たいと思ってた。
でも結構エグイよ…と聞いてなかなか勇気が出なかったんだけど、先に『悪魔を見た』の方を鑑賞したもんだから、もうこれ観たら他のも観れるだろう……ってことでようやく踏ん切りがついたわけw
監督は『哭声/コクソン』のナ・ホンジン。

韓国映画にしては子役の女の子がヤバイくらい可愛い…。
もう可愛くて可愛くて見入ってしまった。

感想を語る上でまず言っておきたいのは「やっぱり警察が無能である」ってこと。
もうそこを許容できない限り韓国のクライムサスペンスは観れないからw

この映画、あらすじを読まない方がいい、絶対いい。
私は読まなかったのでマジで驚いた。
え?犯人捜しの映画じゃないの??って。
犯人はあっさり捕まるしあっさり自供するのよ、それが怖いのよ…。
こういう犯人ってのは今まで観たことがなかったので結構衝撃。

ただ、あっだり逃亡キメちゃうのはもうご都合主義だし、備考してた女刑事はいらなかったんじゃないか?ってくらい役に立ってないし、色々脚本ひでえな、と思うんだけど、
そんなもんどうでもいいくらい緊迫感が凄いんだわこの映画。
一人で足掻くジュンホにどんどん感情移入していって、この主人公もまた珍しいキャラだな…と。
女なんて商売道具にしてた腐った男が、いつの間にかデリヘル嬢ミジンの為に駆けずり回ってるんだよ。
レビューで「なんでいきなりいい奴になったのか心境の変化がちゃんと表現できてない」って書かれてたんだけど、
私はむしろその逆で、「何も描いていないのにちゃんと心境の変化についていける」と感じたんだよね。
ほんと、そういう演出あるか?って感じなのに、伝わってくるんだよ不思議と。
ミジンの無事を祈る娘のウンジの存在ってのもジュンホにとっては大きかったのかもしれない、でもそれとは違う部分でジュンホはあれほど一人で戦ってたんじゃないかと。
結局、デリヘル経営者という名の元刑事、なんだよなジョンホは…。

ラスト、犯人とジュンホの格闘はホントに凄まじい…。
はじめから終わりまで、全部エグイ、救いのない話なのに、なくて泣ける不思議な映画だった…。

KCIA 南山の部長たち PG12

原題 THE MAN STANDING NEXT
監督 ウ・ミンホ
2021年公開
製作国 韓国

あらすじ
1979年10月26日、韓国。大統領直属の諜報(ちょうほう)機関である中央情報部(KCIA)の部長を務めるキム・ギュピョン(イ・ビョンホン)が、敬服していたはずの大統領(イ・ソンミン)を射殺する。事件の40日前、アメリカに亡命したKCIAの元部長パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)が下院議会聴聞会で韓国大統領の横暴を告発していた。キムは、かつての友人でもあるヨンガクに大統領の命で接触し、事態収拾を図るが、その再会が彼の人生を大きく狂わせていく。
解説: 1979年10月26日に韓国で起きた朴正煕大統領暗殺を基にした金忠植の「実録KCIA-「南山と呼ばれた男たち」」を原作にしたサスペンス。

セクシーと華を封印したイ・ビョンホンの見事な演技を堪能。
実話を元に(多少プロパガンダ的要素もあるのかもしれないけど)した映画なので地味、かなり地味。
でも大統領殺害場面の緊張感が半端ない。ここはもうすべての役者に拍手を送りたい。
韓国映画すげぇ…。
イ・ビョンホンとクァク・ドウォンの共演ってのもなんか嬉しい。
大統領役のイ・ソンミンは初めて観たけど、怖い、怖いよこの人…。
こんな汚い大統領いるのかよ、って感じなんだけどいかにも韓国だなぁ。
アメリカはかつての大統領をそこまで悪し様には描かないよね。
徹底して現政権に都合の悪い人物は貶め、その逆は正義とする、その恐ろしい国の方向性が映画においては最大限の魅力になってるからなんとも皮肉なものだ。

この映画はキム部長(イ・ビョンホン)の忍耐、忍耐、忍耐、を我慢大会のように眺めつつ、大統領暗殺シーンで一気に心を開放するというストレス解消映画かもしれないw
暗殺シーンがとにかく素晴らしいので、そこを味わえただけでも観てよかったな~と思う。

小説感想

武漢コンフィデンシャル 単行本 – 2022/7/27
手嶋 龍一 (著)

あらすじ
新型コロナウイルスの「発生源」として世界を震え上がらせた武漢は、中国革命の地にして、国共内戦の要衝でもあった。十歳でこの地に流れ着いた李志傑は、己の才覚を頼りに動乱の時代を駆け抜けたが、文革の嵐に見舞われ、家族は国を追われてしまう――。

それから五十年後、李一族の「業」は、MI6の異端児スティーブン・ブラッドレーと相棒マイケル・コリンズを巻きこみ、“謀略の香港”に沸き立った。感染爆発は、なぜ武漢から始まったのか? インテリジェンス小説の巨匠が満を持して放つ衝撃作にして、シリーズ最高傑作!

うーん、期待外れ、面白くない。
ノンフィクションのような小説っていうのが売りらしいけど、いまいちだったな。李一族のくだりはそこそこ興味深かったけど、CIAやらなんやらゴチャゴチャしてるところですっごい飽きる。
今911テロの話だっけ?ビンラディンがどうのこうのだっけ…?とかボンヤリ考えて読んでたな…なんか単調すぎて。
中国の歴史おさらい、みたいに楽しめるところも多少あったけど、それならもうそういうノンフィクション読んだ方がいいよな、ってなってしまう。
だってこの本、小説ならではの面白さみたいなもの感じさせてくれないんだもん。
いつ盛り上がるんだろう、と思ってる間に終わってたっていう…なんともうまく感想が伝えられない本だわ。この人の作品は多分もう読まない。

爆弾 単行本– 2022/4/20
呉 勝浩 (著)

あらすじ
些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。

めちゃくちゃ面白かった!!!

この著者の『スワン』がいまいちだったので(登場人物全員嫌な奴で作者が性格悪そう…とかいう感想書いた?やつ)あまり期待してなかったんだけど、すっごくよかった。

 
取り調べ質での言葉の応酬がメインの小説なのでかなり好みが分かれると思う。
法廷ものとか好きなので私はかなりの大好物なんだけど、会話ばっかでつまらんっていうレビューも結構見掛けた。
ズスキが放つ流ちょうな言葉の中に爆弾を仕掛けた場所のヒントが散りばめられてるので刑事はその糞ムカつくトークを、1秒たりとも集中力を欠くことが出来ない追い詰められた状況で聴かなきゃいけない、という我慢比べみたいな状況。
最初の刑事がしてやられた場面、お見事なんだよね…。
なんかもう、この小説ずーっと自分を試されてるような感覚で読んでしまう、とても危険な小説だったのかもしれない。
そして、この刑事と同じように私もまんまとやられてしまい、そして自分の醜さも知ると言う……。
この、犯人と思われるとぼけた中年スズキが自分の中でひと昔前の恵比寿さんのイメージでずっと頭の中動いてたな…w

で、見事に自信崩壊した刑事が類家という刑事と途中交代するんだけど、この男がまたイイ!
交代後が熱い!!!
ズズキvs類家の暑苦しいバトルがすごい。

と、その合間に街で必死に爆弾を探し回る刑事達とか、ズズキが昔住んでいたシェアハウスらしき家で死体が見つかるとか……男が爆発するとか……その昔マスコミ世間にとんでもない恥をさらして警察を辞めていった刑事とそれをかばった刑事のエピソードなんかが絡んできて結構あわただしい。
ただ、そのスキャンダルで辞めていった刑事と、その後の死、彼をかばう発言によって警察の仲間から総スカンをくらうようになり、ずっと鬱屈した思いで刑事を続ける男(等々力刑事)の話はどこまで必要だったのだろうか…。

いや、思いっきり重要だし必要なのはわかってるんだけど、最初は等々力が主役だと思って読んでたから途中戸惑ってしまった。
冒頭ではてっきり等々力vsスズキ、の構図で進んでいくストーリーだと思ってたので…。
でも結局、等々力の存在って、「スズキになる一歩手前の危うい状態」を表すためだったのかな。

これまた重要なポジションで出てくる新人婦警がいるんだけど(今は婦警って言わないのかな)、組んだ先輩のことをこっそりあだ名付けして脳内で勝手に呼んでるところが好きだったな…w
こんなシリアスで重いストーリーにあんなクスっとくるユーモアを加えるなんて、イイね!

ラストもいいんだよね…。
ドっと疲れて、誰もが切ない余韻、やりきれなさを抱えるラスト。ぜひおすすめしたい一冊です。

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 単行本– 2020/11/30
東野 圭吾 (著)

あらすじ
名もなき町。ほとんどの人が訪れたこともなく、訪れようともしない町。
けれど、この町は寂れてはいても観光地で、再び客を呼ぶための華々しい計画が進行中だった。
多くの住民の期待を集めていた計画はしかし、世界中を襲ったコロナウイルスの蔓延により頓挫。
町は望みを絶たれてしまう。
そんなタイミングで殺人事件が発生。
犯人はもちろん、犯行の流れも謎だらけ。
当然だが、警察は、被害者遺族にも関係者にも捜査過程を教えてくれない。
一体何が起こったのか。
「俺は自分の手で、警察より先に真相を突き止めたいと思っている」──。
颯爽とあらわれた〝黒い魔術師〟が人を喰ったような知恵と仕掛けを駆使して、犯人と警察に挑む!

皆に愛されていた元国語教師が殺され、その娘真世とと叔父武史(被害者弟)が事件の真相を追う──というベタなお話。
叔父の武史は元マジシャン、海外で活躍していた過去があるが今は小さなバーの店長。
何やらいわくありげだけどその過去を明かされぬまま終わってしまうのでこれシリーズ化するつもりなのかな…そこまで面白くないのに。

この小説の中に出てくる架空の漫画『幻脳ラビリンス』、これは真世のかつての同級生の一人が描いた漫画で世間では大人気。
それを利用して自分達の町おこしを計画するその他の同級生たち。
ここらへんが複雑に(それほど複雑でもないw)事件と絡み合ってくるんだけど…。
この『幻脳ラビリンス』が映画『ミッション8ミニッツ』と『マトリックス』を足したようなストーリーで本編より面白そうなSFなんだよね…w

うーん、なんかね、パっとしない話だったな、手抜いたのかな東野圭吾。
いや、普通の小説家なら充分合格点って感じなんだろうけど東野圭吾はいつだって面白いものが書けて当たり前、という先入観やら安心感と共に大きな期待もあるわけで、そう考えると期待外れ。

まずブラックショーマンこと神尾武史にあまり魅力がない。
姪っ子に昼食をおごらせる、とかそういうケチな人間というキャラ設定嫌いなんだよね、ケチなおじさんほどみっともないものはない、という私の感性が問題かもしれんけど。
まぁもともとホームズとワトソン君、みたいなコテコテの探偵ミステリが苦手なので(最近やっとそれに気づいた)好みじゃないものをあえて読んでしまった私の落ち度でもある。

ただ、こういうほのぼのした雰囲気が好きな人は多いと思うので、あまり好みが偏ってない人ならそこそこ楽しめるんじゃないかな。
実際最後まで読んでみたら、見事の予想していなかった犯人と犯行理由だったので。
ここらへん、もっとシリアスで重い話だったらこのラストも胸にズッシリきて好きだったかも。
あと、単純に殺された元教師、ちょっと空気読めなさ過ぎて笑っちゃったよ。
そこ以外周りに信頼され愛されて完璧な人なのに、何故犯人に対してその言動を??っていう……。

時事ネタというか物語の中でもちゃんとコロナ禍の日常が書かれてるので、良いタイミングでそれを書きたかったのかもなぁ…。
シリーズ化しても第二弾は読まないと思う。