HAPPY NEW YEAR/読書感想17作品/MUSIC
本年も皆さんのご多幸をお祈り申し上げます
今日は以下の作品の読書感想を書きました
読書感想の前に。
昔から大好きなとんねるず
最近ノリさんがまた才能爆発させてるけど実は『GG STAND UP!!』よりこっちがお気に入り。このお洒落さ出せるのがとんねるずなんだよね。
- 1. 読書感想
- 1.1. 教団X
-2017
中村 文則 (著) - 1.2. 役小角仙道剣
(新潮文庫) – 2005
黒岩 重吾 (著) - 1.3. 弓削道鏡 (上下巻)(文春文庫)–1995
黒岩 重吾 (著) - 1.4. 溺れる魚
(新潮文庫)– 2000
戸梶 圭太 (著) - 1.5. ラプラスの魔女
(角川文庫)– 2018
東野 圭吾 (著) - 1.6. 火の粉
(幻冬舎文庫)-2004
雫井 脩介 (著)/ - 1.7. アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
(ハヤカワ文庫)– 1977
フィリップ・K・ディック (著), 土井宏明 (イラスト), 浅倉久志 (翻訳) - 1.8. ヒポクラテスの誓い
(祥伝社文庫)–2016
中山七里 (著) - 1.9. 三月は深き紅の淵を
(講談社文庫)-2001
恩田 陸 (著) - 1.10. 夢をかなえるゾウ
-2007
水野 敬也 (著) - 1.11. 検察側の罪人
-2013
雫井 脩介 (著) - 1.12. 彼女はもういない
–2011 ※R-18
西澤 保彦 (著) - 1.13. アンドロイドの夢の羊
(ハヤカワ文庫SF)–2012
ジョン・スコルジー(著),内田 昌之(翻訳) - 1.14. 愛妻日記
(講談社文庫)–2007
重松 清 (著) - 1.15. ロビンソン・クルーソー
(光文社古典新訳文庫)–2018
Daniel Defoe(著), 唐戸 信嘉 (翻訳) - 1.16. 六枚のとんかつ
(講談社文庫)–2002
蘇部 健一 (著)
- 1.1. 教団X
-2017
読書感想
教団X
-2017
中村 文則 (著)
あらすじ
突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。
一言で感想を述べるとしたら「私には合わない」だ。
一部からは「純文学」と言われて評価されてるらしいが……というかそもそも自分は「現代純文学」たるものに対して「なんじゃそりゃ」と思っているふしがある。そのことからして、この本を論じるに値しない人間かもしれない。
この作品を「実験的」だの「斬新」だのと言うならもうなんでもありなんじゃね?と思う。
「俺のうちで映画観ない?」と言われて遊びに行ったらトレーニングマシーンと自慢の筋肉を見せつけられた…みたいな。よくわからんたとえだけど、そんな感じかなあ…。
教団の内部を書けるほどの力量はなく、でもその手の批判に対しては「宗教の馬鹿馬鹿しさを揶揄してみた。目的はあくまで人の心を描くこと」とでも言っておけばなんとかなりそうなほど、とってつけたような各キャラの訳ありエピソードが節操なく出てきていやおうなしに見せつけられる。
著者の自慰が酷すぎるため、どの台詞をどのキャラに言わせても何ら違和感がないくらい個性が死んでる。いや、個性がまったくない。恐るべし教祖でさえ「えっと、どんな奴だっけ」という薄さ。かといって心に強く響くメッセージもなく、登場する人たちの苦しみが重くのしかかるわけでもなく、ひたすらにあちらこちらの文献からの引用を読まされる苦痛。
大層なこと言っても人間なんてそんなものさ、とひきこもりの人間に説教されてるような微妙な気持ちになる。いや、お前より知ってるわ!みたいな。
この内容の物語でこの分厚さ、読み切っただけでも自分を褒めたい。思わせぶりなくせにラストは雑な仕上がり。読んでも何も心に残らなかった。これを絶賛した……というか絶賛し合ってる又吉直樹と西加奈子まで嫌いになりそう。(西加奈子に関しては一冊読んで句読点の付け方が生理的に合わず二冊目を手にとることはおそらく一生ないだろうけど)
ダラダラと愚痴ってしまいましたが、日本文学に関する素晴らしい記事を発見したので貼っておきます。
素晴らしい分析で、ただグチグチ言っていた自分が恥ずかしくなったw
この方の文を読んでモヤモヤが晴れました。
なぜ日本の純文学はつまらないのか(『三角猫の巣窟』)
役小角仙道剣
(新潮文庫) – 2005
黒岩 重吾 (著)
あらすじ
七世紀後半の大和。修験者・役小角は、厳しい律令制度に虐げられる人人を救うために、異能を駆使して権力者に立ち向かう。鬼神の如き活躍を慕って多くの弟子たちが葛城山中に集結、遂に一大勢力の中心となった役小角を狙って、時の権力者・持統天皇や藤原不比等、物部氏率いる刺客の群れが迫り来るが―。
古代史マニアの私にとってお馴染みの黒岩時代小説。あと少しだけ未読の作品があるが、著者が故人となった今…焦らずのんびり全作品制覇しようと思っている。
役小角(えんのおづの)、別名「役行者」(えんのぎょうじゃ)。
かなりぶっとんだエピソードで知られるこの人物。当然、後世において創作されたところも多いんだろうけど、この小説の中では生き生きと描かれている。
古代史小説でありながら、ファンタジーキャラ役小角がここまで身近な一人の人間として動き回っていることがすごい。躍動感が半端ない。
さすが黒岩重吾だ。
とはいえ、創作混じりの人物を描くとなると重厚感に欠けるのもまた事実。
でもまあそこらへんの、「史実と空想のバランス」が絶妙なのが黒岩重吾だ。
史実の重みとフィクションの軽快さ、その配分が完璧!!
そして、どの黒岩作品でも見られる「師弟関係」。今回もそれが一つの見どころだ。
ただ、やはり古代史は地味だな~と改めて感じさせる一冊だったw
この時代に興味がない人にはチンプンカンプンだと思う。
なので私はいつも、読書好きな友人が相手であっても黒岩歴史小説を人に勧めることが出来ない……。
そこが、悲しいところ…。
弓削道鏡 (上下巻)(文春文庫)–1995
黒岩 重吾 (著)
あらすじ
国家揺藍期の天平。御世は血で血を洗う政争の時代でもあった。河内の無位氏族に生まれ、法力僧になる以外は出世の糸口がなかった青年道鏡。かたや豊満美貌の孝謙女帝。平城京を舞台に、運命の出会いを果たし、火の如く燃えさかる二人の純粋な愛の行方…。古代史小説の第一人者が、雄渾に清冽に描ききった新王朝ロマン。
『役小角仙道剣』に続いて、黒岩古代小説でございますっ!
違う視点でこの時代を書いた別タイトルの黒岩小説があったはずなんだけどいまいち思い出せない。
誰を主役に書いた作品だったかなあ……思い出せないんだよ…。
その、思い出せない他作品でも出てきた、「逃亡中の船の上で藤原仲麻呂(恵美押勝)が惨殺されたのち、まだ十代そこそこの仲麻呂の娘が絶命するまで百人の兵士に犯された…」という内容の文章、これ読むの二度目なんだよね。
サラっと書いてあるが軽く吐きそうになってしばらく落ち込んだことを覚えてる。
あまりに簡潔なその一文、ものすごく自分の想像力が働いてしまい、想像を絶する苦しみだっただろう…と、逆に事細かに書かれていた方がまだマシなような気がする。
今回も同じ時代をテーマにしたお話だったのでやはりその一文があった。二作に同じ文面ってことは史実なんだろうな…悲しいかな…。
なんだったかなあ…『天風の彩王 藤原不比等』と『闇の左大臣 石上朝臣麻呂』くらいしかこの時代にかする小説ない気がする。
他は時代がちょっと違う。
でも、仲麻呂は藤原不比等の孫にあたるし、しかも仲麻呂が女帝軍に惨殺された時には、とっくに不比等は死んでる。だから別の小説だったかな…。
石上朝臣麻呂も仲麻呂の時代には死んでるんだよなあ…。ほんと思い出せない、モヤモヤする。黒岩作品なのは確かなんだけど。
それはさておき、推古、持統と並び、よく耳にする孝謙女帝。
私はこの女天皇が昔から嫌いだ。
何故かって、女のダメなところを寄せ集めたみたいな人間だから。
「これだから女は権力持っちゃだめなんだよ」といわしめる、典型的なダメダメ権力者だと思う。
だからこそ、我が物顔で権力を振りかざした仲麻呂にちょっと同情しちゃうんだよな…。
自業自得とはいえ、なんかただただ老女(この時代は40後半とかもう老女扱い)の個人的恨みでここまでされちゃって。
そもそも帝王学を学んだ天皇でありながら男に溺れすぎでしょ。
黒岩先生は孝謙女帝を多少美しい女性っぽく描いてくれちゃってるけど(それにしても性格はヒステリー丸出しではある)、他の文献で孝謙女帝が美女だったなんて書かれているのを見たことが無い。
ホントに権力がなけりゃ誰も近寄らないような女性だった、と私は思ってる。
だが、だがしかし、道鏡法師との長年の恋愛を見るに、道鏡にしかわからない女帝の魅力があったのかもしれない…。
そう思わせる小説を書いた黒岩先生は本当に偉大だ…。
わずかな資料をもとに、これまたわずかな史実に様々な創作を加えて、ここまで血の通った壮大な物語をつくりあげるんだもんなあ、ほんとすごい。歴史小説なんてたくさんある、と言われそうだけど、日本古代史なんてほんーーーに超地味なんだわ。謎が多すぎて逆に妄想すらしづらい、そんな世界。しかし、弓削道鏡という一人の男の愛・欲・正義……決して綺麗ごとにはおさまらないこの人格を見事に表現してる。現代社会で苦しむサラリーマンも共感すること間違いなし。
いつの時代も男は大きな成功を夢見て、時に女性に惑わされ、またそれを支えに奮起し……変わらぬものがありますなあ…としみじみ。本作品で描かれる孝謙女帝の目を覆いたくなる我儘も、、剥き出しの感情も、その素直さも、同じ女として嫌悪侮蔑しつつ…どこか共感する部分もあり、なんというか、すごい物語だった。
奈良時代のドロドロした権力闘争や不安定な社会情勢と、道鏡・女帝二人の純愛。相反するものがごっちゃまぜになり反吐が出るほどおもしろい。混ぜるな危険…胸焼けするほどの大作でした。
溺れる魚
(新潮文庫)– 2000
戸梶 圭太 (著)
あらすじ
謹慎中の二人の不良刑事が、罪のもみ消しと引き換えに、監察から公安刑事の内偵を命じられた。その刑事は、ある企業から脅迫事件の犯人割り出しを依頼されていたのだ。脅迫は、幹部社員に珍奇な格好で繁華街を歩かせろという、前代未聞の内容だった。いったい犯人の真意とは?意表を衝く人物設定とスピード感あふれるストーリー展開が評価された快作
『闇の楽園』と同じく…戸梶作品の割りにソフトな内容かな?
といっても戸梶圭太の小説はのきなみグロくてド下品、それを基準にした上での「ソフト」であるw
割と綺麗な顔立ちで小柄、性格的にはさして問題はないが、女装癖がある刑事と横領の罪でやべーことになってる不良?刑事、両者の「万引き」と「横領」を盾に公安刑事の内偵を命じられる。
まずこの「大企業幹部への脅迫」が戸梶圭太だな~と思わせる、好き嫌い分かれる設定だと思うw
私は非常に好き、かなり笑ったw
ただ今作品登場人物が多いことと、誰に感情移入して読むか迷うところではある。
私は唯一まともに感じた男「公安刑事」の立場で読んだかな。なんか結構イイ男のイメージが浮かんだのでw
まあ、ワチャワチャしてます、戸梶作品なので細かいことは考えちゃだめ、脳味噌空っぽにして楽しむ作品。
むしろいつもよりちょっと刺激が少なかったかな~。
でも映画化されてるらしい。おもしろそうだな…
ラプラスの魔女
(角川文庫)– 2018
東野 圭吾 (著)
ある地方の温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生した。地球化学の研究者・青江が警察の依頼で事故現場に赴くと若い女の姿があった。彼女はひとりの青年の行方を追っているようだった。2か月後、遠く離れた別の温泉地でも同じような中毒事故が起こる。ふたりの被害者に共通点はあるのか。調査のため青江が現地を訪れると、またも例の彼女がそこにいた。困惑する青江の前で、彼女は次々と不思議な“力”を発揮し始める。
この作品で東野圭吾…ちょっとどうなの?と思ってしまった。この方、以前から「理系」であることに誇りを持っているフシがあったけど、今回はそれが空回りしているような気がする。アピールが過ぎるというか、その割に「さすが理系男!!!」と思わせてもくれないし。
まず、冒頭にこんな場面がある。ヒロイン=円華 その母=美奈
「そうね、今の季節、このあたりは大気が不安定になることが多いのよ」美奈は文科系の出身だが、自然科学の言葉をさらりと口にする。たぶん夫の影響だろう。円華の父は医者だ。
「大気が不安定」って天気予報に毎日のように出てくるフレーズで、一般人にも割と広く使われてるじゃん。円華の父親が医者である説明をしたかったにしろ変なぶっこみ方だな…と。
まあそれはいいとして……。
いつも通り、本当に読み易いお話を描く人だなあと感心します。
サクサク読める。ただ、ミステリーとしてもファンタジーとしても中途半端。SFに片脚つっこんでる内容だけど、なんだかとにかく安っぽい。
「ラプラスの魔女」とタイトルはすっごくかっこいいんだけどね…。
ただやっぱり面白いですね、円華と竜巻の関係はまるで映画ツイスターのようで、冒頭から掴みはOKって感じだし、温泉と殺人?事件、そして謎の青年、事件に関わるその他の人物たち……と、まあどのキャラにも癖があって飽きません。
特に、研究者青江の存在はこの手のお話では欠かせない。
欲を言えば……円華の存在があまり生きていなかった気がする。あまり魅力を感じなかった。
だけどまあ、そもそも自分はファンタジー要素っちゅーのがとにかく苦手で、SF世界の中にほんの少し混ざるその要素に敏感すぎるのかも。
魔法だとか超能力が嫌いなんだよね、信じるとか信じないじゃなくて、人間が出来るであろうギリギリの線を攻めるっていうのが好きだから。
そう考えたら『ぼくの地球を守って』にドハマりして今も漫画の聖書的に思ってるのは自分でも驚きだ。
きっと、とんでもなく緻密なSF世界設定が圧巻すぎて、サーチェスとかサージャリズムだとかいうファンタジー要素でさえ納得させられちゃったんだろうな。
SFとファンタジーの融合、お手本のような漫画だ。それは多分『進撃の巨人』も一緒だし、DBも例外ではない。DBってSFとファンタジーと戦闘と…ひとつのジャンルでは表現できないもんなあ。
最後に
『ラプラスの魔女』
期待を大きくは裏切ることもなく、かといって期待を大きく超えることもない、これぞ東野圭吾作品だっ!!!ということでした(褒めてます)
火の粉
(幻冬舎文庫)-2004
雫井 脩介 (著)/
あらすじが載ってなかったので簡潔にまとめてみた。
東京調布市で起きた(幼い子供を含む)一家3人惨殺事件の被疑者武内。そして、彼に「無罪判決」を下した裁判官の梶間。数年後、裁判官を引退した梶間は武内と再会、改めて感謝の言葉をかけられる。それから間もなく、梶間の隣に武内が「偶然」単身で引っ越してきたことで、家族ぐるみのご近所付き合いが始まる…。
この事件のモデルになったのはなんとなく、北九州監禁殺人事件の犯人じゃあないかと思う。ターゲットの隣に越してくる用意周到さ。反吐が出るほどの人当りのよさ、度を越した親切とさりげない接触の繰り返しによって対象人物の生活スタイルから何から探り出す甲骨さ。おとしやすい人物に目星をつけ、まずその家の主ではなく妻から籠絡していくという、計画も確実性の高さを重視している。
しかし全てが終わってみれば、実に小さな目的で小さな破壊を繰り返し、小さな小さな自分だけの世界を構築しているだけに過ぎない哀れな男っていう…。一見全てが計画的に見える、頭脳犯のようでいて非常に感情的。テロリストでもなくシリアルキラーでもなく、単に「自分にとって居心地の良い場所の確保」という目的。そうまでして(人間性を捨ててまで)手に入れたものは、所詮居心地の良い鳥かごに過ぎないというのに。
この小説で特に印象に残っているのが、冒頭の裁判所での梶間の心理描写。
乱れた髪に根深い悲しみと憎悪の表情を見せる被害者親族男性対して「あざとい」というような感情を抱く。おそらく、ここの描写は梶間という裁判官がいかに「人間を見る目が無いか」を皮肉っていたのかな…と。
武内が隣人になったことで最終的には全ての人間が不幸になるわけだけど、全ては梶間が蒔いた種でもあり同情は出来ない。かといって証拠不十分な梶間を罰するというのもこれまた間違っている。なので一概に梶間を責めるわけにはいかないんだけど、「温情判決で有名」とか言われいてる裁判官には今一度梶間の立場になって物を考えることが必要なんじゃないかと思うわ…。
無実と信じて良き庇護者のごとくエールを送った相手が、いざ隣人になったときはてさて、裁判官はどんな感情を抱くのか。例えば「反省の色が見える」と言い切った強姦魔の罪を自らの判断で軽減したとき、その裁判官は自分の娘の近くにその人物を置けるのか…とか。まあ誰もが抱く疑問、モヤモヤを盛大に皮肉って素晴らしいエンターテイメント小説にした著者の手腕を讃えたい。
そして、細部まで丁寧に練られている、個人的に好きなところ。梶間の息子の嫁、彼女は生活環境が悪くグレていた過去を持つ。つまり厳格な梶間や、温室育ちの息子とは一味もふた味も違う。
なるほど、最初から武内の胡散臭さに気づいているじゃあないか、リアルだなあ、さすがだなあ…ゾクゾクするなあ…と勝手に興奮したw ただ、詰めが甘かった。悪人に勝つのは極悪人だけなんだな。小説だからなんとかなってるけど、現実はもっと恐ろしいと思うとやりきれないね…。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
(ハヤカワ文庫)– 1977
フィリップ・K・ディック (著), 土井宏明 (イラスト), 浅倉久志 (翻訳)
あらすじ
長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。そんななか、火星で植民奴隷として使われていた8人のアンドロイドが逃亡し、地球に逃げ込むという事件が発生。人工の電気羊しか飼えず、本物の動物を手に入れたいと願っているリックは、多額の懸賞金のため「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けるのだが…。
言わずと知れた、フィリップ・K・ディックによる、映画『ブレードランナー』の原作小説。
最初の出版は1968年だそうで、読んでみてわかったけどこりゃあ古いとか新しいの概念を超えたSF小説だな…と。
娯楽として面白いか、というとしょせん翻訳版、原語で読んでいない自分には偉そうなことは言えない。
とにかく暗い、暗いんですこの小説w
そして世界観が独特すぎてついていくのに必死だったw
私としては、映画『ブレードランナー』は何度観ても好きだと思える映画ではないけど、それでもこの原作の世界観を80年代によくぞあそこまで映像化できたな…と感心はする。
ただ、やっぱり何かが違う。原作に近いようで何かが違う……。
小説を読んでいて感じる「圧倒的な悲壮感」が映画では不足している気がする。でもそれは娯楽映画としてヒットさせなければいけない事情を考慮するとまあ仕方ないのかな。
登場人物の感情の揺れ幅が非常に小さいため、正直おもしろくはないし主人公の心情の変化はやや唐突に感じてしまいなかなか感情移入できない。
しかしその淡々とした心情描写は意図して書いたものなのか…まあ難しい。
一切の華やかさを捨てた近未来SF小説。
プロットの一つ一つを紐解けばいくらでもサイドストーリーが描けそうなんだけど、読み終わった後私の心に残ったのは、登場人物たちが持つ、「生物への強烈な憧れと執着心が与える物悲しい余韻」だった。
ヒポクラテスの誓い
(祥伝社文庫)–2016
中山七里 (著)
あらすじ
栂野真琴は浦和医大の研修医。単位不足のため、法医学教室に入ることになった。
真琴を出迎えたのは法医学の権威・光崎藤次郎教授と「死体好き」な外国人准教授キャシー。
傲岸不遜な光崎だが、解剖の腕と死因を突き止めることにかけては超一流。光崎の信念に触れた真琴は次第に法医学にのめりこんでいく。
彼が関心を抱く遺体には敗血症や気管支炎、肺炎といった既往症が必ずあった。「管轄内で既往症のある遺体が出たら教えろ」という。
なぜ光崎はそこにこだわるのか――。解剖医の矜持と新人研修医の情熱が隠された真実を導き出す、迫真の法医学ミステリー!
WOWOWでドラマ化されたらしい。それも納得、監察医なんとか…みたいなタイトルでお昼?の連続ドラマでもなりそうな、非常に楽に読める内容の小説。
自分の愛する身内の遺体を、司法解剖することへの抵抗だったり、真実の追及というものの価値とは……っていう結構深いテーマではあるんだけど、
ある目的の為には時に、周囲から「非情」ととられる覚悟を持って臨まなければならない、という、これも不変のテーマですね。
偏屈爺さんを絵に描いたような光崎教授のキャラは古臭く、とても数年前の作品とは思えない。
が、それが妙な安心感を与えてくれて、良くも悪くも無難な小説となってます。キャシーの存在も同じく、ダサいですw
真琴と若い刑事の関係も、シリーズ化したら互いに打ち明けないまま恋心を温めて周囲はヤキモキしつつ見守って…、そんな姿が目に浮かぶよう。
ほんと、平成初期のセンス。
でもサクっと読めます。真琴の成長も微笑ましいし、テーマの重さを考えるとより広く支持を得るならこのキャラ設定は正解なのかな?
重厚感はまったくないので、まあ私としてはもう少し重たい雰囲気が好みかなあ。
光崎教授の万能感が物語の幅を狭めてる気がしないでもない。
三月は深き紅の淵を
(講談社文庫)-2001
恩田 陸 (著)
あらすじ
鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に2泊3日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、10年以上探しても見つからない稀覯本(きこうぼん)「三月は深き紅の淵を」の話。たった1人にたった1晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー。
『蜂蜜と遠雷』や『夜のピクニック』が話題になっていた恩田陸の小説、初めて読みました。
これはねえ……一言で表すと、 技巧派 ってやつですね。
何冊も積読してて、書店で買ったり中古屋で買ったり、最近特にハイペースなわけですが…、今作品は図書館で借りたことが悔やまれる!
これはゆっくりじっくり読むべき本。
速読してしまうタイプなので、味わう前に読み終わってしまった。
各章で主人公が変わり、四章から成るこの小説、ちょっと四章目で飽きてしまい(それも当然の流れ)流し読みですわ。
でもそれが間違ってないんだなこれがまたw
とにかく、本好きなら一度は読んでおいて損はない、そんな一冊です。
以下、ネタバレ注意
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第一章、鮫島功一が会長宅に招かれるお話。これが古き良きミステリー小説風の雰囲気がダダ漏れで、推理小説好きにはたまらないお話になってる。
第二章、第三章……やはり稀覯本「三月は深き紅の淵を」が関わるお話になってます。
が、見事に文体その特徴が変わっていて、全編通して読んでみると まるで、性別も異なる4名の人間が書いた本 のように思える。
そして、第四章で私が飽き飽きして流し読みでおーわり、となるのも至極当然の結果で、この第四章は稀覯本の著者が頭に浮かんだことをただただ垂れ流している四章そのものなんですわ、そりゃ理解できないわけだw
私はこれに気づかず、第一章を読み「おお、すげーいい感じ」とワクワクし
次の章、また次の章と読み進めながら「なんだこれ、女が書いたみたいな小説だなあ、嫌だなあ」と、「恩田陸」を検索までしてマジで女性じゃん、陸だから男かと思ってたよー道理で女にありがちな話だと思った。
なーんて、まんまとひっかかってしまったw
まさに、この登場人物たちが探し求める稀覯本「三月は深き紅の淵を」を、私は読まされていた……というわけだ。いやはや天晴!!!
ただ、小説としてすごく面白いかどうかは別問題。
正直そんなに面白くはない。恩田陸ってなかなかのテクニシャンだなあ、そういう感想を持つに至った一冊でした。
夢をかなえるゾウ
-2007
水野 敬也 (著)
あらすじ
「お前なぁ、このままやと2000%成功でけへんで」ダメダメなサラリーマンの前に突然現れた関西弁を喋るゾウの姿をした神様“ガネーシャ”。
成功するために教えられたことは「靴をみがく」とか「コンビニで募金する」とか地味なものばかりで…。
ベストセラー『ウケる技術』の著者が贈る、愛と笑いのファンタジー小説。
すごく感想が難しいお話。
自分が歳をとりすぎたのか、素直に感動できないことが悔やまれるというか…なんというか。
神様が関西弁、っていうこの設定自体がダウンタウンのコントを思い出させる。むず痒くて少し恥ずかしい。
中学生の自分に戻ってこの本を読んだらハマったんじゃなかろうか。
日本人なら誰しもが知る、ドラえもんのようにダメダメサラリーマンを叱咤激励する、ちょっぴりおかしなゾウの神様。
愛らしいというかまあ微笑ましい話でもあるが…。
まあガネーシャ本人も言うようにそこらの自己啓発本に書いてあることをただ繰り返し言っているに過ぎないわけだが、
最終的に「人間てそんなに成功しなきゃいけないの?」というガネーシャの考えは私の日ごろから思っていたことでもあるので非常に共感した。
特に今の時代、やたらヒットしているのが「成功者になるには」というノウハウ本。
誰も彼も似たようなことを書いているようで、はたして詐欺師の戯言とどう違うんだろうなあ…なんて冷めた目で見てしまう。
だって、書いてるあんたらが成功したって何で言い切れるんだい?って。
たかが数年何億稼ごうが、その先何が待ってるかわからないのに、まだまだ人生の折り返し地点なのに何をもってして「自分は成功者だ」と言うのかなあ。
その成功が、とんでもない不幸の原因になりかねないのに。成功の形は人ぞれぞれ、そして失敗だらけの人生にもたらされる優しさもあるはず。
綺麗事かもしれないけど、成功成功ってやっきになっている人たちが果たして日本の貧困時代にたくましく笑っていた人より魅力的か?幸福なのか?と考えるとそうでもないだろう、と思ってしまう。しかし、それもまた自分が今割と恵まれた環境でヌクヌク暮らしているから言える綺麗ごとなのかもしれないし、なおかつ時代が違う。もう高度経済成長期を迎えることもない、先行き怪しい日本…もとい、世界なのだから
現に、どんどん人間は孤独になっていってるじゃないか。
親は公園で遊ぶ子供そっちのけでスマホをいじくり、若者も中高年も寂しい寂しいと顔も知らない人間を信用してみたり、永遠に空腹が満たされない餓鬼のようにくだらない動画を漁って時間を潰したり……。
とまあ、あ色々思うところがあるので、ガネーシャの言葉はそれなりにうんうん、と納得したわけです。
だけど、結局主人公の成功というラストがあるわけで、著者は保険をかけたな…とw穿った見方をしてしまった。
確かに王道のオチ、感動のラストだったけどね。私はそこが評価の分かれ目だったかな、と思う。まあ好みの問題だな。
でも、普段本を読まない人でも読み易い、ほんとーに、読み易いお話でしたね。
あとはゾウの笑いのセンスをどう感じるか…かなあ。
現代人はとかく、病みたがるものだ…と私は感じている。
悩みたがりの病みたがり。寂しがりたがりで求めたがり……。まあ自分もそうなので偉そうなことは言えないけど。
検察側の罪人
-2013
雫井 脩介 (著)
あらすじ
東京地検のベテラン検事・最上毅と同じ刑事部に、教官時代の教え子、沖野啓一郎が配属されてきた。ある日、大田区で老夫婦刺殺事件が起きる。捜査に立ち会った最上は、一人の容疑者の名前に気づいた。すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた人物だった。男が今回の事件の犯人であるならば、最上は今度こそ法の裁きを受けさせると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ちはじめる――。
キムタクと嵐の二宮が共演し話題になっていたという映画の原作。
映画は観ていないので違いはわからないけど、『犯人に告ぐ』と並ぶほどの傑作と言われている本作品、よかったです…本当によかった、ドストライクなお話でした。
やっぱりどこか横山秀夫の描く世界と似てるんだよね……だから好きなんだろうなあ。
ベテラン・やり手・人柄も問題なく頼り甲斐のあるダンディーな検事といった雰囲気の最上。
対する若手検事の沖野、両者の対比がとても素晴らしく、遠いようで近い、まったく種類が違うように見える各々の「正義感」。
これが、実はとても近いものだった……そんな切なさを感じさせてくれる。
沖野の苦しみもわかるし最上の、検事らしからぬ間違った正義感もまた突き放せないものがある。
それは果たして間違っているのか?と最上を応援してしまう自分はこの文明社会で決して理性的な人間ではなく非難されるべきものなんだろうな…とわかりつつ。
この小説のキーマンとも言うべき、老齢のやり手弁護士(人権派として有名)白川。
彼の描き方が本当に素晴らしい。
誰よりも正義の為に戦うように見えていて、実はまったくその逆をいく人間性。
検察や警察は「敵」であり、厳罰を受けそうな被疑者は守るべき対象という皮に包まれた「儲け道具」である。
勿論現実世界ではこのような人間ばかりではないけど、そういった弁護士が多く存在するのもまた事実だ。
この白川の胡散臭さをリアルに表現していてものすごく……好きですw
そして、白川と前川の対比。
前川は最上の大学時代からの友人でイソ弁として真の人権派弁護士を名乗る資格のある人情深い男だ。
被害者にも加害者にも寄り添い、自分の身を削るようにして弁護士という職務に向き合っている稀有な人間。
偶然か必然か、白川と前川、響きは似ているが見事に対極にいるこの2人。
前川の涙はあまりにも真っ直ぐで、こんな友人がいること、それだけでも最上の未来は真っ暗闇なんかじゃない、と思わせてくれる。
そういう著者の優しさが垣間見えるところもこの小説の素晴らしいところだ。
また、最上という男の取る行動が、冒頭で感じさせる彼の人物像からかけ離れているようで、実は彼の素の姿だと思わせてくれる説得力。
人間が当たり前のように感じる憤り、悲しみや苦痛の共感、それらに押しつぶされそうになり一見狂ったように見える行動は涙をも誘う。
そう、結果として彼はただ「検事という肩書を持つだけの普通の男」なんだよね。
司法試験を通り、最も強大な国家権力を持つ検察の人間としてとても許される行動ではないが、自分は共感の波にのみこまれた。
冷静沈着法令順守、これが当たり前の検事たちが果たして、その済まし顔のとおり平静な心で事件に向き合っているのか…。
最上は血の通った一人の人間としての葛藤を、検事として有り得ない行動によって読者に見せつけたんだ。
終わり方もまたいいんだよね…。
賛否両論あるんだろうけど、決してハッピーエンドではないんだけど、まるで著者の想いまでもが溢れ出るように放たれた沖野の咆哮。
全ての登場人物から目が離せず骨太な小説、読んでよかった~と思える一冊でした。
彼女はもういない
–2011 ※R-18
西澤 保彦 (著)
あらすじ
母校の高校事務局から届いた一冊の同窓会名簿。資産家の両親を亡くし、莫大な遺産を受け継いだ鳴沢文彦は、すぐさま同学年の比奈岡奏絵の項を開いた。10年前、札幌在住だった彼女の連絡先が、今回は空欄であることを見て取ったその瞬間、彼は自分でも不可解なほどの困惑と女性への強烈な憎悪を覚え、やがて連続殺人鬼へと変貌する。誘拐、拉致、凌辱の様子を撮影し殺害する。冷酷の限りを尽くした完全殺人の計画は何のためだったのか――。一方、突如起こった連続殺人に翻弄される刑事・城田理会らは、わずかに残された手がかりを元に犯人を追う。鳴沢の暴走を城田は止めることができるのか?青春の淡い想いは、取り返しのつかないグロテスクな愛の暴走へと変わる……。
一応18禁作品。
当然性描写が多いが安いAVのような描写に殺害が加わる…といった感じかな。それも直接的な殺害描写がないため(首を絞めて窒息死させる)、このR指定というのは主にセックスシーンによるものかと思う。
正直突拍子もないストーリーで、主人公のパっとしないが陰キャとも言い切れない人物像と、アグレッシブルな行動力、そして不可解な行動原理、これらがチグハグに感じる。
でも、アンバランスなようでいてこういうなんともスッキリしない、理解に苦しむような要因で心の芯がぐちゃぐちゃに屈折する男はいるのかも…と思わせるところがちょい不気味だ。
つまり、行動原理(犯行動機)までもが「ありそうでなさそうでありそうで…」みたいなw
この小説はとにかくラスト、ラストが全てです。
このラストに「おおおお!!」と驚くかどうかで評価が決まる。
ちなみに私は「マジかっ!!」とまんまとハマり、くだらん犯行動機やら何やらが全て消し飛んでしまった。
後味は非常に悪いのかもしれないけど私は結構おもしろかった。ラストのオチだけで、それまで一切感じなかった「切なさ」すら感じてしまった。
女性が同じ方法で何度も乱暴され殺害されるのでそれが苦手な人にはお勧めしません。
とにかくこれはネタバレ禁止本ですw
アンドロイドの夢の羊
(ハヤカワ文庫SF)–2012
ジョン・スコルジー(著),内田 昌之(翻訳)
あらすじ
地球‐ニドゥ族の貿易交渉の席上で事件がおきた。戦争につながりかねないこの問題の解決のため、ニドゥ族は代償として特別なある「羊」の調達を要求してくる。期限は一週間。凄腕ハッカーの元兵士クリークがこの羊探しを命じられるが、謎の宗教団体に追われ、反ニドゥ勢力の暗殺者に狙われるはめに。そして、ようやく見つけ出した羊の正体とは…。“老人と宇宙”シリーズ著者がP・K・ディックに捧げた冒険活劇SF。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のオマージュらしいが内容は全然関係ない。
一応世界線が続いているのかな?と思わせるだけで。
本作品を読んで頭に思い浮かべるのは『メン・イン・ブラック』をさらに大規模にした世界観かな。
あの映画よりもっと地球人の立場は弱く、エイリアンたちが現代社会で言う国連の常任理事国みたいな権限を持ち、地球はそれより一段下がる…とイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。
その姿形は巨大昆虫のようだったり様々で、言語もままならないが貿易やら何やら色々な決め事のために揉めたり駆け引きしたり、は現代社会と変わらない。
真面目に読むべきかニヤニヤしながら読むべきか迷ったけど、序盤からニドゥ族の貿易担当官を、尻にぶちこんだ機械から発生させた「屁」によってどうこうしようというところで「こりゃ真面目に読まなくていいな」と私の心は決まった。
政治世界のゴチャゴチャに宗教的な話が混ざり、なおかつグロい殺害描写もちょっと出てくる。
しかし最後は何故か法廷での解釈論争が加わり、全体的にわけのわからない話になってる。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のようなシリアスさを求めるなら読まなくていい作品だ。
ちなみに、やっぱり聖書についての解釈みたいなくだりが入ってくるところが海外小説だなあ…と当たり前ながら感心した。
小説としてはイマイチだったけど、映画化したらかなり面白いものが出来そうな気はする。
愛妻日記
(講談社文庫)–2007
重松 清 (著)
あらすじ
『ごめんね、ごめんね…。妻をいままで辱めなかったことを詫びたのでした』。直木賞作家による匿名の官能小説として大反響を呼んだ表題作のほか、夫のゆがんだ情欲を描いた全6編。「家族と夫婦の物語を書き続けたいから」こそ書いた、著者初の“超インモラルな”性愛小説集が今、その禁断の扉を開く。
誰よりも「人間」を描くことに長けている重松清。
『とんび』を読んで感動した人があらすじも知らずにこの『愛妻日記』を読めばひっくり返ること間違いなしw
夫婦を題材にした完全官能小説であり、夫婦愛に加えどんどんエスカレートし変態チックになっていきます。
でも、あとがきに書かれているような「人情ものしか書かないなんて一言も言ってない」という著者の反骨精神に反して、どことなく重松節が捨てきれずやはり温かさを感じてしまう。
なので、エロス小説というより、夫婦の性の形、その多様性を表現したテキスト応用編といった印象を持った。
短編集なので色々な夫婦が出てくるが、やはり本作品でも「人間を描くことに長けている」作家さんだなあ…としみじみ感じさせてくれた。
すべてがFになる (講談社文庫)–1998
森 博嗣 (著)
あらすじ
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。
はっきり言って古臭さを感じてしまう小説。
90年代っぽいダサさ…とでも言うのかな、レトロ感が出せない程度の古臭さが否めず、どうも話に入り込めなかった。
まず、登場人物の名前がダサい、ダサすぎる。
これは時代どうこうなのか?著者のセンスがそれなんだろう…としか思えないw
なので漫画の脚本としてならアリだろう。
オチはなかなかのものだが、そこまで読み進めるのが結構な苦痛。
大助教授・犀川創平のキャラが薄すぎていてもいなくてもいいんじゃ…?と思ってしまうw
そしてヒロインの萌絵のお嬢様キャラはその独特の口調が間延びするというか、はっきり言って「邪魔くさい」。
日本のSF小説として割と評価が高かったので購入したんだけど、これは失敗だったなあ…。
発想はかなりおもしろいんだけど、本当にアニメのようなお話だった。
ロビンソン・クルーソー
(光文社古典新訳文庫)–2018
Daniel Defoe(著), 唐戸 信嘉 (翻訳)
あらすじ
船に乗るたびに災難に見舞われるロビンソン。無人島漂着でさすがに悪運尽きたかと思えたが、
住居建設、家畜の飼育、麦の栽培、パン焼きなど、試行錯誤しながらも限られた資源を活用して
28年も暮らすことになる…創意工夫と不屈の精神で生き抜いた男の波瀾の人生を描いた傑作。著者紹介
ダニエル・デフォー
1660‐1731。イギリスの小説家、ジャーナリスト。ロンドンでプロテスタントの家に生まれたため、非国教徒のための学院で学ぶ。卒業後は商人となるが、32歳で破産。その後は著述家・ジャーナリストとして活躍しながら、政治家の密偵も務める。1719年に『ロビンソン・クルーソー』を刊行。これは英国文学初の小説のひとつとされ、後世に多大な影響を与えた
タイトルだけは知っている、という人も多い古文学作品。
そういえば一度も読んだことが無いなあ…と図書館でたまたま目にしたのをきっかけに読んでみました。
読み終わってから色々検索して辿り着いた素晴らしいブログを紹介。
「ロビンソン・クルーソー」を読むなら、おすすめの文庫はどれ? 各社版徹底比較!(とある読書家さんのサイト『備忘の都』)
海外文学について色々書かれているのでぜひ好きな方は参考にしてみてください。
ブログ主さんが本当に本が好きというのが伝わる素晴らしい文章で溢れています。
さてさて、無知な私はこの『ロビンソン・クルーソー』を完全なる実話だと思い込んでましたw
読み進めてくうちに「これが完全なる実話ってのは有り得ないだろ!!!」と我に返り…調べたところ色々な実在人物やら誰かの体験なんかをモデルにしてるようです。
有力なのは海賊がモデル…という説。
翻訳版の違いによって色々印象が変わるお話なんだろうけど、基本、主人公ロビンソンの日記を読み上げるような小説なので、
とんでもない冒険の連続の割りに文章が淡々としていて、それがまたリアリティーがあるのでついつい完全実話と勘違いしてしまった次第でありますw
小説の正式なタイトルは実はちょー長い。
『The Life and Strange Surprizing Adventures of Robinson Crusoe, of York, Mariner:Who lived Eight and Twenty Years, all alone in an un‐inhabited Island on the Coast of America, near the Mouth of the Great River of Oroonoque;Having been cast on Shore by Shipwreck, wherein all the Men perished but himself. With An Account how he was at last as strangely deliver’d by Pyrates』
(自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった1人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述)
長すぎるだろっ!!!!
『愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない』とか『別れましょうわたしから消えましょうあなたから』なんか目じゃないくらい長いっ!!!
さて、肝心の感想ですが、読む前はもっともっと冒険色が強い話だと思っていたけど、実はかなり宗教的要素が強く、
無神論者…とまではいかないけど無宗教のロビンソンが神という存在をどう捉えるか、そう向き合っていくか、どう折り合いをつけるか、という
部分がすごく重要になってくるお話だった。
危機が訪れる⇒うわあああ神様ああああちゃんと信仰しなくてごめんなさい⇒危機が去る⇒すっかり忘れる⇒危機が訪れる⇒うわああああ神様ああああ
これの繰り返しが妙にリアルで、ちょと笑ってしまう。
喉元過ぎれば熱さ忘れる…の典型。
無人島での28年間、そのうち24年くらいが平穏なこと平穏なこと。
あまりにもひとりぼっちを満喫しているので拍子抜けした。なんという、サバイバル気質、天性の無人島男。
しかし25年目あたりから人喰い野蛮人の上陸やらなんやら、一気に展開が変わっていく。
無事無人島を抜け出し元の生活に戻ってからも、周りの人間に恵まれている為誰かに騙されることもなく自分の農場も残っていて
手に入れるべき資産も戻ってくる。この辺は小説ならではだな~と。
物語はそこで終わるかと思いきや、またも旅路で200を超える狼との戦闘、熊との遭遇など本当に飽きさせない男だw
実はこのお話には続編があるらしい。機会があればそちらも読んでみたい。
六枚のとんかつ
(講談社文庫)–2002
蘇部 健一 (著)
空前絶後のアホバカ・トリックで話題の、第3回メフィスト賞受賞作がついに登場! 新作『五枚のとんかつ』も併録。またノベルス版ではあまりに下品だという理由でカットされた『オナニー連盟』もあえて収録した、お得なディレクターズ・カット版。トリックがバレないように、必ず順番にお読みください。(Amazonより引用)
日本人が主人公なのに何故かホームズ小説を読んでるかのように錯覚してしまう。もしや、愛あるおふざけオマージュ作品なのか?
様々なレビューサイトでも賛否両論、どちらかというと賛否の否が多いように見える。
私はこの小説を読んで「この本を楽しめる人間でありたい」と思ったのでありますw
本って、読書ってそんなに高尚なものではないんだよ、勘違いすんなよ、気取ってんじゃねーよ、という気持ちにさせられて、逆に読書がもっと好きになれる一冊でもありました。
そのくらいこの著者は好き放題書いていて、非常に楽しそう。
あまりの馬鹿馬鹿しさに嫌なことを忘れさせてくれる、でも人によっては怒りを覚える、そんな本だ。
いいじゃないか、『オナニー連盟』、素晴らしい、素晴らしいよ!!!
主人公は保険会社の調査員。
宝石の盗難事件や殺人事件があれば保険金を支払う案件かどうか調査に向かう。
しかし非常に間抜けな男で、度々謎の友人古藤(ことう)を頼る。この古藤が曲者で、時に的を射た推理をし時にとんでもないオバカ推理で主人公を混乱させる。
また、主人公の会社の後輩として早乙女という120kgの巨漢男も登場する。
愛嬌があり、主人公が悩んでいるときに偶然ヒントを与えるという役目も果たしている。
この短編集、おバカな話も多いが意外に正当派推理小説を思わせる話もあり、結構飽きさせない本になってます。
本当に何も考えず、肩の力を抜いて読める小説で、残酷描写もなく(下ネタは満載だけど)、2000年代とは思えないレトロ感もあり、古き良き推理小説下品版としてお勧めしたい一冊です。
