名作との出会い~読書感想2本~

素晴らしい小説に出会ってしまった…。

読書感想

天国でまた会おう(ハヤカワ・ミステリ文庫)
ピエール・ルメートル (著)
早川書房 / 2015年

あらすじ
1918年11月、休戦が近いと噂される西部戦線。上官プラデルの悪事に気づいたアルベールは、戦場に生き埋めにされてしまう!そのとき彼を助けに現われたのは、年下の青年エドゥアールだった。しかし、アルベールを救った代償はあまりに大きかった。何もかも失った若者たちを戦後のパリで待つものとは―?『その女アレックス』の著者が書き上げた、サスペンスあふれる傑作長篇。フランス最高の文学賞ゴンクール賞受賞。

素晴らしい作品でした。
フランス最高の文学賞ゴンクール賞受賞も納得!
これをあの『その女アレックス』等の刑事カミーユシリーズを書いたピエール・ルメートルが書いたってんだから驚き!!!!

文学的でありとても美しい悲劇でありながら色鮮やかで、勧善懲悪・正義は勝つ…みたいなベタなところもあったりして、エドゥアールの苦悩やアルベールの生真面目で気の小さいところに
感情移入しながらでも楽しく読み進めることが出来る。
それもこれもプラデルという突き抜けた悪役の存在のお蔭かもしれない。

終戦間際の戦場で、部下にとんでもない仕打ちをしたプラデル。全てはここから始まったんだけど…。
彼がまさに、映画『タイタニック』でレオ様の恋敵キャルドン・ホックリーを演じたビリー・ゼインのような存在感で、読んでる間ずーっと彼の顔がチラついてたw

最初は単純に戦争もので友情もの…と思っていた。
でも程良い親子の愛憎劇、国を巻き込む一大詐欺を企むエドゥアールとアルベールの大胆さ、融通の利かない役人メルランの「一途さ」等々…色々な要素が実にバランスよく盛り込まれていて、
さらに「仮面」というアイテムがオペラ座の怪人を思わせる華やかさと芸術性を醸し出している。

戦争により仕事も恋人も失ったアルベール、顔の下半分を失った挙句既に戦士した兵士の名を語って生きていくエドゥアール。
とてつもなく不幸で貧しくてどん底の2人の生活…それなのに、ただただ悲壮感に包まれただけの物語になっていないのは、人間の根底にフランスのパリという土地への憧れがあるからだろうか。

エドゥアールが同性愛者だということは序盤からわかっているのだが、それを必要以上に見せる事のないストーリー。
彼の持つ天真爛漫さや絵の才能、そして可もなく不可もない、さして取り柄のないアルベールの変わらぬ献身的な態度。
全てが大袈裟ではなく、柔らかい空気に包まれていて心地よい。

エドゥアールの死を信じて疑わない、彼の父・マルセル・ぺリクールが突如見せる悲しみの涙。
ここの表現がとんでもなく美しくて一緒に泣いてしまった。
こんなにも心を打たれる涙のシーンは久しぶりだった。

一見、とことんリアルを求めた話のようでいて実はとても夢があるような気がする。
それは、人の弱さとか強さ、狡さ、、色々なもの全てをのみこむくらい、登場人物それぞれが下す決断の「温かさ」を感じたからかもしれない。

私が特に好きなのは、定年まであと数年の役人メルランだ。
身なりは不潔で愛想がなく、会う者すべてに嫌悪感を与える男。
私はこの男のが本当に好きだ。

誰もが誘惑に負けるであろう状況で、1ミリたりとも信念を曲げなかった男。
奇跡のような人間だと思う。ありがとうメルラン。

ちなみに、この作品は2017年にフランスで映画化されているようだ。

アルベールがひげヅラのおっちゃんでちょっとイメージが違うw

というわけでこの小説、めちゃくちゃお勧めです。

追撃の森 (文春文庫)2012年
ジェフリー・ ディーヴァー(著), 土屋 晃 (翻訳)

あらすじ
通報で森の別荘を訪れた女性保安官補ブリンを殺し屋の銃撃が襲った。
逃げ場なし―現場で出会った女を連れ、ブリンは深い森を走る。時は深夜。無線なし。援軍も望めない。
二人の女vs二人の殺し屋。暁の死線に向け、知力を駆使した戦いが始まる。
襲撃、反撃、逆転、再逆転。天才作家が腕によりをかけて描く超緊迫サスペンス。

ITW長編賞受賞
初めて読む作家さんだな~と思ったら、私の好きな映画『ボーン・コレクター』の原作小説を書いてる人だった!
映画を知らない方に説明すると、寝たきりになってしまったやり手刑事(デンゼル・ワシントン)が、新米警官(アンジェリーナ・ジョリー)の「現場保全能力と観察眼」を見込んで、凶悪殺人事件の捜査を命令する…というお話。
割と有名だけど名作か?と言われるとそこまでではない…かも。私は寝たきりでもセクシーなデンゼルと、まだ若さで肌がピチピチしたアンジーの組み合わせがいいなあ…って感じで何度か観てる。
結構ハラハラドキドキするサスペンス映画だ。

話戻って、本作品『追撃の森』、私の苦手とする「女刑事」ブリンが主人公なんだけど、まあすごい、この人がすごい。
とにかくどんな危機的状況でも最大限にその能力を生かし、危機を回避し、時には攻撃側に回る。
今まで色々な小説や映画を観てきてこんな女刑事をみたことがない。かっこいい、かっこよすぎて、なんだか不憫にすらなってくる。
しょっぱなから犯人の銃弾で頬を打ち抜かれ歯を失い、ダダラダラと血を流すし、車ごと崖から転落してみたり、ボコボコに殴られたり蹴られたりするのに同情する気も起きないくらいすごいんだもん…。
この女刑事にならオイラ抱かれてもいいw

そんなブリンの強烈な能力もさることながら、天敵となった殺し屋ハートの存在感、ブリンとの戦闘の駆け引き、もはやこれは疑似セックスでないかい??
そのくらいこの2人がすごい。
常に互いの動きを予測し、冷静にその裏をかき、どこまでも果てしない追いかけっこが続く。
その間森の中で麻薬を製造してる少人数のグループのバンに遭遇。ブリンに新たな危機が。
そこで三者三様、己の利益のために行動するわけだけど…。
まるでラディッツ戦の悟空とピッコロのように、その一瞬だけは共闘したかのような形になってみたり。

そんでもって読んでて息切れするくらい森をあちこちするブリンと女性(ブリンが助けた女、名前忘れたけどめっちゃ重要人物)。躍動感がすごいというか、表現が上手だから自分も逃げ回ってるようなハラハラ感と疲労感w

他にもまあ後々どんでん返しが待っていて、とにかく癖者が多いお話なんだけど、あまりネタバレしたくないので……。
とにかく最後まで気が抜けない。
海外作品にありがちな、「夫婦・家族の確執」も当然盛り込まれているんだけど、それが物語の邪魔をしていない、非常に効果的なスパイスになってる。

殺し屋ハートの正体も意外だった。

この著者の本をもっと読みたいので、ボーンシリーズ第二弾の『コフィン・ダンサー』上下巻と、よくわからんタイトル『石の猿』上下巻も買ってきた。
今読んでいるレイ・ブラッドリの『火星年代記』を読み終わったら読もうかな。

本の感想