読書感想文
読書感想
『テミスの剣』中山七里

あらすじ
昭和59年。浦和市で不動産屋夫婦が強盗に殺害された。ベテラン刑事・鳴海とともに捜査に当たるのは若手刑事・渡瀬。二人はカネに困っていた青年・楠木が犯人とにらみ、拷問まがいの尋問で自供を引き出した。楠木は公判で自供をひるがえすも、被害者の血のついた上着という証拠が物を言い、死刑判決が。やがて判決は死刑で確定、楠木は絶望の中、自殺を遂げる。 だが平成に入り、渡瀬は驚くべき事実に直面する。強盗殺人犯が問題の殺人も自分がやったと自白したのだ! 楠木は冤罪だったのか? 事態の隠蔽を図ろうとする警察組織に抗い、渡瀬は事件の再捜査を開始する。だが彼はまだ知らなかった、さらに20年後、この冤罪事件が引き金となり、新たな殺人が行なわれることを……。 強引な捜査。証拠の捏造。冤罪。警察と司法の暗部に正面から切り込む重厚なる社会派ミステリーと、ヒリヒリした緊迫感で突進するノンストップ・エンタテイメント、そして意外な真相と巧妙な伏線を仕込んだドンデン返しミステリー――すべてを融合させた傑作。若手時代に逮捕した男は無実だったのか? 渡瀬刑事は孤独な捜査を始めたが…社会派ミステリーに驚愕の真実を仕掛けた傑作。
鳴海の暴力的な取り調べによって強制的に自白させられ、冤罪で死刑判決を受けた楠木。
その片棒を担いでしまった渡瀬。昭和の終わり頃はまだこんな取り調べがまかり通っていたのだろうか…。
息子の無実を信じつつも、獄中自殺によって永遠に我が子を失った楠木青年の両親の苦しみ、親となった今
痛いほど共感していまう。
一方、楠木を犯人と信じて疑わぬ鳴海の傲慢さと一途さ、取り調べシーンを読むながら奴の怒りが次々と湧き出てくるんだが…彼もまた殺された被害者の無念を晴らす為必死である。
なんとも重いテーマ…。
しかしそこは中山七里、読むのがしんどくてもうやめたい…とまではならない軽快なタッチがそこかしこに見える。
楠木の自殺後、証拠の捏造に気づいた渡瀬の内部告発。
裏切り者の烙印を押されてからの壮絶な刑事生活を見せぬまま時は一気に20年後へと飛ぶ。
そこがなかなかうまいな、と。
内部でごちゃごちゃ陰湿なやりとりを20年分見せられてもたまらんので、これはよかった。
空白の20年とすることで、読者の想像を掻き立てる。
20年後の渡瀬の敏腕刑事ぶり、相変わらず孤高であること、鼻につくその正義漢にも、全て自分を鏡でしっかり見つめた上での覚悟が見える。
と、そこからは社会派というかごく普通の刑事ミステリー小説といった雰囲気。
ラストは意外にあっさり。
真の黒幕は割と早めにわかってしまう。
しかしこの小説では渡瀬が自問自答を繰り返す姿、正儀とはなんぞや、
自分が出来ることとは?というテーマからブレることなく話が終わるので非常にまとまりが良い。
しかし、ラストの犯人、いくらなんでも、踏んだり蹴ったり、やめてくれよ……。
とりあえず、サクサク一気読み出来る一冊です。
さて、ようやく先週末に読了したお気に入りの本。もう、最高でした!
『積読こそが完全な読書術である』永山希

~Amazonの紹介文より~
読めないことにうしろめたさを覚える必要などない。
まずはこの本を読んで、堂々と本を積もう。
気鋭の書評家が放つ、逆説的読書論!情報が濁流のように溢れかえり、消化することが困難な現代において、
充実した読書生活を送るための方法論として本書では「積読」を提案する。
バイヤールやアドラーをはじめとする読書論を足掛かりに、
「ファスト思考の時代」に対抗する知的技術としての「積読」へと導く。たしかに本は、人に「いま」読むことを求めてきます。
でも、それと同時に、書物は「保存され保管される」ものとして作られたものだったことを思い出してください。
情報が溢れかえり、あらゆるものが積まれていく時代に生きているからこそ、
書物を積むことのうしろめたさに耐えて、あなたは読書の前にまず積読をするべきなのです。(本文より)第一章 なぜ積読が必要なのか
情報の濁流に飲み込まれている
読書とは何だったろうか
情報の濁流のなかのビオトープ
蔵書家が死ぬとき、遺産としての書物第二章 積読こそが読書である
完読という叶わない夢
深く読み込むことと浅く読むこと
ショーペンハウアーの読書論
「自前」の考えをつくる方法第三章 読書術は積読術でもある
一冊の本はそれだけでひとつの積読である
読めなくていいし、読まなくてもいい
本を読まない技術
積読のさらなるさまざまな顔第四章 ファスト思考に抗うための積読
デジタル時代のリテラシー
書物のディストピア
積読で自己肯定する
いやぁ…理由はわからないんだけどね、この人の「積読むこそ…」という理念、そこに繋げる屁理屈の連続が私にはたまらなく面白かったみたいで、ダラダラと同じこと繰り返し書いてるな~とか思いつつ、終わらないで…まだ読み終わりたくない!と思ってる自分がいましたよw
他者の読書術的な作品からの引用が度々みられるんだけど、その意見を肯定してみたり一部否定してみたりする、その口調が(文体)とても品があってとても優しい。
なんだろうな…理由はよくわからないんだけどすごく好きな本、それしか言いようがないwこんなの初めてかもしれない。
あとやっぱり本って装丁が美しいか、表紙の紙質の硬さが程よく手に合っているか、ページをめくった時の音が美しいか…そういうのすごく大事だなぁと。
そして新品で買った本は中古でどんな綺麗な状態のまま手に入れた本より愛着湧くよね。
それにしても、今まで新品で手にした本の中でもここまで手が喜ぶ本あったかなぁ…いや、覚えてないだけであるのかもしれない。
内容も面白かったんだけどね。
『Another』綾辻行人

あらすじ
夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた! この“世界”ではいったい何が起きているのか!? いまだかつてない恐怖と謎が読者を魅了する。名手・綾辻行人の新たな代表作となった長編本格ホラー。
とても有名な作品。前々から興味があったんだ何故かなかなか手が出ず…。
期待度が高いとそういうことってありがち…。
さて、十角館の殺人に続き二作目の綾辻小説。
なかなか面白かった。
主人公が中学生、冒頭からとにかくゾクゾクするようなホラーテイスト。
しかしミステリー小説でもあるのできっと驚きの種明かしがあるはず、と思いきや、普通にオカルトだった。
でもそれを忘れるほど呪われた三年三組中学生たちの葛藤や苦しみがもろ伝わってきて、ラストも切なかったなぁ…。
まさか中学生が主人公のホラー小説でこんな気持ちになるとは。
文庫版で上下巻買ったんだけど上巻の中盤まではいい加減三年三組の謎を明かせよ!と
結構ヤキモキしたもんだが、なるほど、いざクラスメイトが主人公に事情を打ち明けると
「なるほど…それは話せなくて当然だよな」と納得。
うまく作られたお話だな~と感心。
張り巡らされた伏線の回収がうまい!
そして雰囲気はなんとなく映画『スクリーム』やアメドラ『ハーバーズアイランド』っぽくて好きだな。
この作品の番外編と、続編がつい最近発売されたとのこと。
ぜひとも読んでみたい。
