備忘録

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小説備忘録

 
ザリガニの鳴くところ – 2020/3/5
ディーリア・オーエンズ(著), 友廣純(翻訳)

あらすじと解説ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー。【2021年本屋大賞 翻訳小説部門 第1位】

結構前に、行きつけの書店にて、表紙の美しさに惹かれて買った一冊。
文庫版発売を待てばかさばらないんだろうけどこれは手触りも良いので単行本で持っておきたかった。

アメリカ文学…??なのかな。でもミステリー要素も強い。
淡々としているが翻訳のうまさ?故か、長編ながら飽きが来なかった。

湿地で一人過酷に生きる少女の話なんだけど、悲壮感があまりなくて読みやすかったかな。
日本人にはあまり馴染みのないノース・カロライナ州の湿地や沼や町の様子、そこに生きる人々の様子が頭に浮かぶ文章が良かったんだけど、物足りなさも感じた。
登場人物の描写がとにかくあっさりしているため、感情移入でヤキモキしてしまう、というある意味読書の醍醐味みたいなものをあまり感じず読み終えてしまったかもしれない。
でも、不幸な生い立ちの少女の物語とうたっておきながらこのあっさり感はなかなか珍しいw
この題材ならもっともっとクドくなりそうなもんだけど……。

ひとつ難を言えば、主人公のカイアが何故そこまで少年たちに求められたのか…突然出てくる美少女描写は安直に思えなくもない。
彼女の魅力を感じることができなかったのでなんだかそこだけモヤモヤしたまま…。
まぁ、逆にそれがリアルといえばリアル。
要は、少年達は湿地で貧しくも強く生きる少女に惹かれた…というより「物珍しい美少女に興味が湧いた」というところだろう。
ペットを得るような感覚なのかもしれない。男が性悪でも美しい女ならそれでOKと思う、その単純明快さが垣間見えるお話なのかもw
とはいえ、彼女を深く愛したテイト、彼の愛に疑いの余地はない。
2人の間には確かな歴史があったから。
全体的に暗い話ながらも、少女が自分の不幸をとうの昔に受け入れて淡々と生きていることが救いになってる。
少女は自分のすべてを受け入れて生きる強い女性となった。
あとは町の人々が彼女の存在そのものを受け入れることが出来るかどうか、だったのよね。
ここまで小説がヒットしちゃうと無いかもしれないけど、映画化しやすそうな、そしてなんらかの賞を取れそうなストーリーだと思う。

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