ベジブルらくがきと、読書感想7作品


ニーチェの言葉と共に、彼のたどった旅路と、その町々の美しい風景写真が堪能できる一冊。
説明不要ですね。
ちょっとした写真集のように楽しめます。
読書感想
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)2010
レイ ブラッドベリ(著),小笠原 豊樹 (翻訳)
解説
26の独立した短編を連ねて一つの長編とした作品である。1940年代に『ウィアード・テイルズ』、『スリリング・ワンダー・ストーリーズ』など数誌に発表された短編群に、書き下ろし作品を加えて成立した。年代記の題名にたがわず、個々の短編には1999年1月から2026年10月までの年月が付されてその順の構成になっている。地球人の火星への探検、それを受け入れない火星人との対立。突然の火星人絶滅、地球からの火星への植民、地球における全面核戦争と引き揚げ、そして火星に残った人々の人間模様といった、さまざまなエピソードが語られる。火星という舞台と各種SF的小道具を駆使しながらも内容は文明批評、特に当時のアメリカ合衆国を風刺した作品である。
また、1997年には改訂版が発表された。ブラッドベリはこの改訂版のために前書きを新たに書き下ろし、幾つかのエピソードを入れ替え、年代設定を変更している。<wikipediaより引用>
一言で表すと「おとぎ話のようなSF小説」だろうか…。
なんというか、どの短編も個性が強く、著者が訴えかけてくるメッセージが頭から離れない。
地球人の愚かさを痛感すると同時に、何故か自分も「地球に帰りたい…」と思ってしまった。
あんな地球とおさらばだ、と意気揚々と火星に来た連中が、祖国のピンチを知った途端飛んで帰る様子はなんとも物悲しく、なんとも懐かしい気持ちになる。
結局人類は破滅した地球から泣く泣く追い出され、ここ(火星)から歴史を築いていき、やがてまた同じ過ちを繰り返していくんだろうか。
自分は火星では生きられない……わけもなくそんな風に悲しくなる。
といっても、そんなノスタルジックな話ばかりではなく、容赦なく人は殺されるし騙されるし、結構怖い話も混じっている。
そこがまた怖いおとぎ話っぽくて、その言葉のひとつひとつに、教訓が詰まってるような……そんな気にさせられる。
いつの時代にも通用する普遍的なテーマと、SFの世界観をうまく融合させた傑作だと思う。
恐怖と悲しみと感動と、尊敬と果てしない羨望……。
登場人物たちの色々な想いがズシンと胸に重くのしかかってくる。
様々なエピソードから成る短編集だが、特に好きなのは地球からやってきた神父と火星の人(青い光)のお話。
要は、浮遊している人魂なんだけど、それが彼ら火星人が到達した究極の形だった。
争いも憎しみもない…姿かたちもない…。
自然と涙がこぼれてしまった。
こんな時代だからこそ読まれるべき一冊だと思う。
催眠
<上下巻>
(ハヤカワ・ミステリ文庫)–2010
ラーシュ ケプレル (著), ヘレンハルメ 美穂 (翻訳)
あらすじ
ストックホルム郊外で起きた一家惨殺事件。被害者の夫婦と幼い娘をメッタ刺しにするという手口から、背後に異常な動機を窺わせた。かろうじて一命を取り留めたのは15歳の長男と、独立して家を出た長女だけ。捜査を開始したリンナ警部は、催眠療法で知られるバルク医師に少年から犯人逮捕につながる証言を引き出してくれるよう依頼するが…全世界で話題騒然、翻訳権の激しい争奪戦が繰り広げられた、匿名作家のデビュー作。
うーん、うまいこと「催眠」という小道具が生きてますね。
この催眠療法士の先生っていうか教授っていうか、なんかすごいバッシング受けちゃってかなり気の毒なんだけど、よく練られたストーリーだと思う。
「ラスボス級」の登場人物が1人じゃないんだけど話がとっちらかることなくちゃんと着地してていいですね。
ただ、なんか地味…地味なんだよなあ。おもしろいし個性的なキャラが結構出てくるし、伏線もきちんと回収してる。
何が悪いってことはないんだけど。
結構先の読めない展開で良質なミステリーだし。
でも何かが物足りない。
多分主人公がパっとしないからだと思う。暗いんだよねなんか……残忍な殺人事件ものだから仕方ないんだけど。
だけど映画にしたらおもしろいだろうなこれ。
なんだか話題になった作家さんのデビュー作なので、他作品がどんなテイストなのか、あと数冊読んでみたい。
ピエール・ルメートルの「刑事カミーユ」四部作
ちなみに、以前『その女アレックス』については感想文を書いてUPしました。
しかし、一年程経ってからこれがシリーズ二作目という事実を知り、全部読まねば……と思いつつ今日に至ったわけです。
とはいえ、翻訳版が日本で最初に出版され書店に並んだのが二部の『その女アレックス』だったようで、しかもこの作品は「史上初の6冠達成!」といってかなり話題になっていた(もちろん私はずいぶん後になって知った)。
というのも、このミス……宝島社のムック「このミステリーがすごい!2015」の海外部門第1位、
「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第1位、
『ハヤカワ ミステリマガジン』「ミステリが読みたい!」海外編第1位、
「IN☆POCKET文庫翻訳ミステリー・ベスト10」第1位、
さらに英国の「英国推理作家協会 インターナショナル・ダガー賞」、フランスの「リーヴル・ド・ポッシュ読書賞」も受賞したというモンスター小説。
翻訳や出版の順番という諸々の事情をのぞいたとしても、日本国内ではこの二作目『その女アレックス』から先に読んだ、という人がほとんどなのも至極当然のことと言える。
私は今回一作目『悲しみのイレーヌ』と三作目『傷だらけのカミーユ』を買ったついでに、イレーヌを読んだあとアレックスの方も再読した。
一度読んだ内容なのでかなり短時間で読めた。大した時間のロスにならなかったのでよかった。
長々と前置きしましたが、さっそく感想を。

悲しみのイレーヌ
あらすじ
『その女アレックス』のヴェルーヴェン警部のデビュー作。 奇怪な連続殺人をめぐる物語がたどりつく驚愕の真相。
若い女性の惨殺死体が発見された。パリ警視庁のヴェルーヴェン警部は、裕福な着道楽の部下ルイらとともに捜査を担当することになった。
殺人の手口はきわめて凄惨で、現場には犯人のものと思われる「おれは帰ってきた」という血文字が残されていた。
やがて過去の未解決事件とのつながりが浮かび上がる。手口は異なるものの、残虐な殺人であることは一致していた。
これは連続殺人なのだ。そして捜査が進むにつれ、犯人は有名なミステリ作品に登場する惨殺死体を模して殺人を繰り返しているらしいことが判明した。
ジェイムズ・エルロイの『ブラック・ダリア』、ブレット・イーストン・エリスの『アメリカン・サイコ』……ほかにも未解決の事件があるのではないか?
ヴェルーヴェン警部らは過去の事件のファイルを渉猟し、犯人の痕跡を探る。
しかし警部は知らなかった――犯人の魔の手が、自身の身重の妻イレーヌへと伸びていることを。 強烈なサスペンスとともに語られてゆくサイコ・キラーとの対決。
これはグロイです、グロイ。
猟奇殺人ものはよく読むが、今回はちょっときつかった。
何故きついんだろう……と考えてみた。
多分、主人公のカミーユ・ヴェルーヴェン警部や周りの刑事(鑑識ぽい人達も含め)「うわあ…なんだこれ」と嘔吐するシーン、精神的に参ってしまう描写が多いせいだと思う。
こういったミステリーっていうのはリアルな殺人描写の中においても、どこか謎解き要素を前面に出した、ある種ファンタジー的な楽しみ方が出来る、というのがおきまりで、
被害者の苦痛やら犯行の残忍さを隅においやってくれるようなおもしろさを期待してこちらも読んでるわけで……正真正銘のグロ好き以外は何も好き好んでスプラッター描写を
待ち望んでるわけではない(と個人的には思っている)。
なので、フランス人にありがちな回りくどく長ったらしい精神論というか複雑な心理の独白とか、さらにはグロ描写がミックスされて、
それが同じパターンで続く(被害者が何人も出る)ため、ひじょ~~~~に胸焼けしてしまった。
そして、肝心の犯人が「あ……こいつなのね、まあ…うん、そうだよね」という人物なので、長々とグロ描写とカミーユの過去の暗い話を読まされて疲れただけの読書タイムだっな~、と脱力感…。
あれこれ言ってみたものの、なんだかんだで邦題の『悲しみのイレーヌ』が一番酷いと思う。原題は知らないけどもうネタバレじゃんこれ…。
正直、二作目と三作目に出現する、「イレーヌを失ったカミーユ警部のトラウマ」的な描写があればこの一作目は読まなくても平気かなあ…と。
その女アレックス
あらすじ
おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。
読むのは二回目。
んー、やっぱり一作目よりおもしろい。
かなり乱暴な描写のオンパレード、殺害方法もすんげーグロイけど、一作目の理不尽な猟奇殺人事件のあとなので、なおさらそこまでグロさは気にならない。
そして、一作目では、気狂い男の自己満足のためにしか存在しなかった「女」という生き物が、今作では強烈な謎と個性を秘めたアレックスの存在によって、
「ただ破壊されドブに捨てられるだけが女ではない」と悲しい形ではあるが、勇気を与えてくれる。
それにしてもアレックスの人生はあまりにも悲しい。しかし、その悲しみに報いようともがくカミーユ警部及び、その他の刑事たちの想いが切なくて心地よい。
一作目にはなかった「正義の力」をほんの少し感じさせてくれた。
傷だらけのカミーユ
あらすじ
『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』のヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の最終作。
アンヌという女性が二人組の強盗に殴られ瀕死の重傷を負った。警察からカミーユに電話がかかってくる。アンヌの携帯の連絡先のトップにあったのがカミーユの電話番号だったからだ。
カミーユは病院に駆けつけ、アンヌとの関係を誰にも明かすことなく、事件を担当することにする。
しかし強引なうえに秘密裏の捜査活動は上司たちから批判され、事件の担当を外されるどころか、刑事として失格の烙印さえ押されそうになる。
カミーユはいったいどのようにして窮地を脱し、いかに犯罪者たちを追い詰めることができるのか。
シリーズ累計100万部突破。2016年「週刊文春ミステリーベスト10」第1位。
こ……孤独だあ…カミーユが孤独すぎる。
っていうかあまりにも秘密主義でかなりイラついた。
一作目から寄り添ってくれていた相棒刑事がどんなときも理解を示してくれるので、思わず「怪しい…」と感じるほどw
いや、この相棒はずーっといい奴すぎて一作目から私は疑ってたんだけど結局いい奴!!!!
今作品も女性への暴力描写がすさまじいです。
これはもはや著者の趣味ですな、誉田哲也の上位互換です、ええ、断言します。
アンヌがボッコボコにされます。
犯人は途中から薄々わかってしまう。
というわけでミステリーとしてはうーん……って感じかな。
ただ、一作目二作目を読んだからには一応読んでおきたい、それだけ。
とにかくカミーユの持つ母親への複雑な心理っちゅーやつがどこまでもつきまとい、ウザすぎる。
しかし、それもこの三作目でようやく決着がつくわけで、まあ……いっか。
あと、カミーユにとってはイレーヌは大事な妻だったわけだが、読者にとってはそれほど思い入れはない女性だと思う。
おそらくそれは私だけではない。
一作目で登場したイレーヌは、あまりにもキャラが薄かった。
とにかくカミーユが孤軍奮闘、というか命令無視、独走して怒られまくりのお話でした。
女運もないなあ…。
死のドレスを花婿に
あらすじ
続いて、これまたピエール・ルメートル作品
『その女アレックス』の原点となる恐怖のイヤミス
狂気に駆られて逃亡するソフィー。聡明だった彼女はなぜ全てを失ったのか。悪夢の果てに明らかになる戦慄の悪意とは。
ソフィーは怯えていた。かつては優秀なキャリアウーマンだった彼女には秘密があった。
ときに奇行を起こし、そのことをまるで記憶していないのだ。そのせいでソフィーは職も地位も失ったのだった。
自分は正気を失ったのか。恐怖を抱えながらも、高名な政治家の家でベビーシッターをつとめるソフィーだったが、ある日、決定的な悲劇が訪れ、彼女は恐慌にかられて逃亡を開始した。
自分は人を殺したのか? 自分は狂気に捕らわれてしまったのではないのか? そんな彼女をずっと見つめるフランツ。
彼の暗い歩みとソフィーの狂気の逃亡が交差するとき、おそるべき罠が全貌を明らかにする!
底知れぬ狂気と悪意が織りなす恐怖の犯罪計画。驚愕の四部構成の最後に浮かび上がるのは恐怖の肖像――
公式情報に「刑事カミーユシリーズ四部作の四作目」という紹介があったんだが、えっ!?四部構成?
警部カミーユ出て来たっけ…?どこがシリーズ第四弾なんだろう。最後までわからぬまま読み終わってしまった。
しかし、これ、おもしろかったです。
内容はとてつもなくエグくて、今回はスプラッター描写は全然ないんだけど精神的にクル…(´Д`)コワイヨー
まさにイヤミスですね、イヤミスのお手本みたいなお話。
よくもまあこんなえげつない話が書けるもんだ……。
でもアレックスのような大ドンデン返しがあって本当読み応えがあったなー。
これは途中で読むのをやめちゃあいけない本ですわ。
多分途中で嫌になって本を閉じた人もいるだろうな…。
動機とか行動が大袈裟というのは否めないが絶対に有り得ないとも言い切れないのが恐ろしいところ。
自分がもしソフィーの立場だったら発狂してるかもしれない。とてもじゃないが反旗を翻す気にはなれない。
やっぱり人間最後は気力と体力だなあ…と。
形勢逆転してからの展開はちょっとあっけないというか、幕切れが地味ではあるけど、登場人物の精神的ダメージは相当なもんだろう…。なにもドタバタ殺し合うだけが勝負ではない。ということでえげつないお話の中、あっさり終わるラストを持ってくる著者はなかなか粋なのかもしれない。
ミステリー好きな人ならぜひともえげつなさに耐えて最後まで読むことをお勧めしたい、いやしかし、あえて読む本でもないかもしれないw
